9月度 関西支部運営部会
「大阪大学 産業科学研究所」見学
支部運営部会(部会長:パナソニック(株)渕上英巳 アプライアンス社副社長)では、9月11日(水)に大阪大学の産業科学研究所を訪問しました。
まず部会の議事として、渕上部会長の挨拶に続き、部品運営委員会の西安開催、ものづくり教室、JEITA関西講座等、支部の活動につき報告がありました。
休憩を挟み、研究所長の菅沼克昭 教授より挨拶と研究所概要の説明がありました。
産業科学研究所は1939(昭和14)年、関西財界・有志の強い要望を背景に当時の大阪帝国大学に設立され、今年80周年を迎えました。常に時代の変化を先取りして組織の改革を重ね、現在は情報・量子、材料・ビーム、生体・分子、ナノテクノロジーの4分野にわたる27研究室で構成。特にセンシング・デバイス、AI・データマイニング、バイオ・材料・ケミストリに強みを有しています。本年からは新たに、ブラックボックスのAI技術を「基本学理に還元」することを目ざし、産業科学AIセンターを設置した所です。(同センターの櫻井保志 副センター長には、前項の「技術セミナー」でご講演いただきました。)
続いて、先進的な研究のいくつかが紹介されました。関谷 毅 教授が開発された世界初の「パッチ式バイタルセンサ」は、大阪大学産婦人科との連携で、胎児・妊婦の遠隔診断に活用が進んでいます。黒田俊一 教授による「匂い・香り解析技術」は、ヒトが感じる匂い・香り情報を400次元でデジタルデータ化し、ヒトに匹敵する嗅ぎ分けを実現しました。永井健治 教授はタンパク質を光らせる研究を進め、医療応用(例えばガン細胞だけを光らせる)、環境貢献(例えば街路樹の葉を光らせる)等、長寿・省エネ社会への貢献が期待されています。能木雅也 教授は、地球上すべての植物に含まれるセルロースナノファイバーを用いて「透明な紙」を開発され、これを用いた電子機器等の研究開発に取り組まれています。その他、IoTナノスピントロニクス展開(千葉大地 教授)、ナノポア計測(谷口正輝 教授、鷲尾 隆 教授)、AIによる品質管理システム(沼尾正行 教授)等、それぞれに著名な研究が紹介されました。
説明後は2班に分かれ、産学連携室の清水裕一 教授、加藤久明 特任助教のご案内により、谷口研究室(バイオナノテクノロジー研究分野)、田中研究室(ナノ機能材料研究分野)、さらに量子ビーム科学研究施設を見学しました。
外部との連携にも注力され、国内では北大、東北大、東工大、九大の各附置研究所と日本最大の研究所ネットワークである「物質・デバイス領域共同研究拠点」を構成。研究所内の企業リサーチパークでは多くの共同研究が進められ、来年には、先端実装技術開発でオープンイノベーションをめざすF3D実装コンソーシアムの開所も予定されています。国際連携の実績も豊富で、特に、世界最大のナノテク研究機関であるベルギーのimecとは2011年に包括的な共同研究契約を締結しました。今回も見学終了後に、研究所の他の多くの先生方と交流の場を持つことができました。
広範な異分野をインテグレートし社会実装する点で日本でも有数の研究力を誇る同研究所と、多様な研究の最先端に触れる絶好の機会となりました。