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技術戦略部活動報告

Society 5.0を創造する新たな標準化の動向
JEITA 国際戦略・標準化セミナー概要

標準化政策部会では、国際標準化の重要性や新規テーマ・重要課題の調査・検討を行っています。その一環として、AIのルール・標準化、シェアリングエコノミーの認証制度と標準化、およびMaaS(Mobility as a Services)の動向を取り上げ、セミナーを実施しました。(2019年10月17日CEATEC)。以下、概要を紹介致します。

AIに関するルール・標準化の現状と今後 小川 雅晴氏/JEITA国際標準化戦略研究会(三菱電機(株))

AIの普及には、信頼性や、事故発生時の補償、プライバシー保護、といった心配事を解消する必要があります。そのために、業界や国を横断したルール作り、標準化が進められています。JEITA国際標準化戦略研究会では、「人工知能に関するルール策定動向と標準化戦略」を取りまとめましたので、概要を紹介します。

AIのルール・標準化動向

近年、日・米・欧・中それぞれが、公平・公正性やプライバシー確保・安全管理などの要求事項をとりまとめています。日本では、内閣府が一般原則として「人間中心のAI社会原則」を発表し、この中で企業が「AI開発利用原則」を定め遵守すべきこととしています。これに関連してAI利活用・社会実装を促進することを目的に、総務省が「AI開発ガイドライン(2017年)」、「AI利活用ガイドライン(2019年)」を発行しました。ここでは、セキュリティ、プライバシー、透明性、アカウンタビリティなど10原則を遵守することが求められています。
国際標準化動向としては、IEEE、JTC1/SC42、IEC/SEG10、ITU-T、OCEANISなど、さまざまな機関で議論されています。中でもIEEEは、“人類はAIや自律システムに対して優位であるべき”、という視点で議論し、“Ethically Aligned Design(EAD)”(倫理に沿った自律/知的システムの設計指針)を発行しました(2019年3月)。
国内では、法的責任に関する法改正を検討中、開発契約や利用契約は「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(経済産業省)(2018年6月)で論点が提示されています。
また、「AIプロダクト品質保証ガイドライン」(AIプロダクト品質保証コンソーシアム)(2019年5月)も発行され、AI搭載製品の品質保証の共通指針として示されています。

AIの標準化が今後どのように進んでいくか(今後の展望)

【AIネットワーク化のアーキテクチャと標準化(相互運用性)】 AIネットワーク化のアーキテクチャと標準化(相互運用性) AIネットワーク化が進んでいく中で、Society全体のアーキテクチャにおける各レイヤ(デバイス、エッジサーバ、コアネットワーク、クラウドサーバ)間のAIが情報交換することになり、それらAIシステム同士が連携して動作するための通信プロトコルやデータ形式について、利用分野(スマートホーム、インフラ、モビリティ、製造プロセス)毎に、インタフェース規格として標準化が進むことが見込まれます。

一方、AIシステムやAIサービスの不具合によって発生する損害を補償する保険制度の普及には、性能を試験する方法・手順・合否基準を標準化し、第三者認証機関による認証試験を通じて品質を保証することが必要になってくると思われます。 JEITA国際標準化戦略研究会がとりまとめた報告書「人工知能に関するルール策定動向と標準化戦略」に関心をお持ちの方はご連絡ください。
https://www.jeita.or.jp/cgi-bin/form/form.cgi

シェアリングエコノミー認証制度と国際標準化 二宮 秀彰氏/(一社)シェアリングエコノミー協会

シェアリングエコノミー認証制度とは

【AIネットワーク化のアーキテクチャと標準化(相互運用性)】 シェアリングエコノミー認証制度とは) シェアリングエコノミーは、可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」と定義されています(内閣府「シェアリングエコノミー 検討会議中間報告書」)。

シェアリングエコノミー認証制度は、安全性、信頼性などの基準を審査し、合格したものにマークを付与して公表することにより、利用者の選択を促すものです。この制度は、法規制と自主規制の中間に位置付けられた共同規制として運用しています。 シェアリングエコノミー自体、当初、諸外国と比べて認知度が低かった背景があり、内閣府が取りまとめた「シェアリングエコノミー 検討会議中間報告書」(2016年6月)の中で、安全性および信頼性評価のためのモデルガイドラインが公表され、この政府が示した方向性や一般原則に基づいて、民間であるシェアリングエコノミー協会が2017年6月から運用を開始したという経緯があります。 認証制度では、シェアリングエコノミーのサービス設計において、4つの基本原則[①安全であること、②信頼・信用を見える化すること、③責任分担の明確化による価値共創、④持続可能性の向上]に基づいて確認し、さらに6つのルール[①登録事項、②利用規約等、③サービスの質の誤解を減じる措置、④事後評価、⑤トラブル防止、⑥情報セキュリティ]を定めて運用しています。第三者機関による客観的な審査に基づき認証を取得することで、より客観性・信頼性のある効果が期待できます。

  • (1)サービスの品質に関する信頼性を提供する仕組みが備わっていることの証明
  • (2)サービス提携の不履行や損害の発生等に備え、責任分担を明確化する仕組みが備わっていること
  • (3)保険料の割引
  • (4)自治体連携の円滑化
  • (5)海外展開への寄与

認証は、協会に所属するシェア会員において、CtoCマッチングプラットフォームを提供するサービスを対象としています。

国際標準化に向けた取り組み

日本提案により、シェアリングエコノミーの国際標準化を担うISO TC324 “Sharing Economy”(幹事国:日本)の設立が2019年2月に決定し、2019年6月に第1回の総会が日本で開催されました。日本では、日本規格協会(JSA)と協力・連携して国際標準化を進めています。ベンチャー企業も多く市場の変化も激しい中、認証制度のノウハウを基に、各国(主に、カナダ、イギリス、フランス、韓国、中国、シンガポール)との連携を図りながら、できるだけ早期に標準化をめざしていくこととしています。

MaaS(Mobility as a Services)と標準化 坂下 哲也氏/(一財)日本情報経済社会推進協会

海外におけるMaaSの動向

【MaaSモデルの分類】 海外におけるMaaSの動向 MaaSは、車を持たない社会の構築をめざす、という環境問題を重く受け止めているフィンランドの考えから、環境政策ロードマップ検討の中で出てきた言葉です。2015年にフィンランドのMaaS Global社が「Whim」というさまざまな交通機関を繋げる仕組みの提供を開始し、成果を上げています。
MaaS導入ステップには4つのモデルに分類できます。現在の提案はレベル2(供給型の輸送)で、需要に応じた提供(=デマンド型)のレベル3以上は、未だ実現していません。

それを実現するにはさまざまなデータを使えなければなりません。①コアデータ、②通信、③トラフィック、それらをインテグレーションすることでMaaSになりますが、一企業では実現はできません。道路台帳などのオープンデータの活用(①)、5Gの整備(②)、異なる業種との連携(③)、これらができて初めて、需要に応じた供給(レベル3以上)が可能になります。
公共交通機関を無料にしている海外事例があります。これは、移動の手段を失う(運転をやめる)と活動量が減って健康度が下がるという筑波大学の調査結果もあり、重要なことです。欧州で進んでいるMaaSがめざしているものは、移動のパーソナライズ化(需要に応じた公共交通機関の提供)です。これを進めると都市空間を見直さなければならなくなります。

日本のSociety 5.0におけるMaaS

一方、日本の状況を見ると、人口減少、労働力不足、タクシー運転手の高齢化による減少などの課題があり、日本のMaaSとして、異なる主体の交通機関をどう繋げるかという議論があります。「官民ITS構想・ロードマップ2019」の中で、MaaSを「出発点から目的地まで、利用者にとっての最適経路を提示するとともに、複数の交通手段やその他サービスを含め、一括して提供するサービス」と定義されていますが、これに基づいて、異なる主体でどう繋げるかを模索し、さまざまな実証実験を進めています。MaaS社会実装に向けて、白ナンバー車両の事業利用の課題など、情報社会に不整合な法規制が多々あり、仕組みの検討の必要があります。

国際標準化の行方

MaaSそのものの国際標準化はまだ見られていませんが、ISO TC204 “Intelligent transport systems”のWG 19でMaaSに近い議論が起きています。ここでは、商用車を対象としたモニタリングシステムのアーキテクチャを一般車まで拡張し、ビッグデータやAIを活用したスマートシティのコアフレームワークへの拡張をめざしています。
MaaSの普及には、例えば国土データ、都市データ、移動データ、生活データなどシステムが異なるもの同士のデータを繋げるアーキテクチャ、相互運用性を考えていく必要があります。国際動向から見た方向性としては、共同規制、サービスやデータ品質・プロセスなどの協調などの標準化議論が起こってくるのではないかと思います。