Activity
技術戦略部活動報告

IEC TC113 マドリード会議報告 (TC113: Nanotechnology for Electronical Products and Systems)

ナノテクノロジーは広範な産業に変革をもたらす基盤的な技術分野であり、素材・材料から環境・エネルギーに至る多くの領域への応用が期待されており、我が国の優位性のある標準化をめざして取り組んでいます。2019年5月20日から26日にスペイン/マドリードでIEC国際会議が開催されました。

会議の会場となったマドリード自治大学 会議の会場となったマドリード自治大学

TC113の活動

IEC TC113(電気・電子分野の製品およびシステムのナノテクノロジー)は2006年10月、電気・電子分野におけるナノテクノロジー応用に関して標準化作業を進めることを目的に発足しました。IEC単独の活動として、WG3(性能評価)、WG7(信頼性)、WG8(グラフェンとカーボンナノチューブ)、WG9(薄膜有機太陽電池/ナノエレクトロニクス)、WG10(発光ナノ材料)、WG11(エネルギー貯蔵)の6つのワーキンググループで構成されています。また、ISO TC229とはJWG1(用語および命名法)、JWG2(計測と特性評価)の二つのジョイントワーキンググループを形成し、リエゾンも多数結んでいます。議長国は日本、幹事国はドイツです。日本は、WG/JWGのコンビナーを6つ取っており、中心的な役割を果たしています。ナノテクに関係した多様な製品群を水平的に網羅している上、最近はグラフェンに関する提案が増えており、国際会議において十分な議論とマネジメントが益々重要になってきています。今回は、スペイン/マドリード会議について、WG3、WG8、WG9に絞り報告します。

WG3の活動状況

WG3は、より基本的な規格提案、および新領域に関する議論を行っています。今回のWG3では、TC113の最も根幹部分であるBDS(Blank Detail Specification)の基本コンセプトが議論されました。これは、それぞれの材料・評価方法に特有な指標の仕様書であり、この中に使われるKCC(Key control characteristic)と呼ばれる重要な制御指標・特性について、その定義や関係性、仕様書の作成方針に関する規格です。これまで多くの時間をかけて議論してきましたが、ようやくCD(Committee Draft)の仕上げの段階まで来ました。

WG8の活動状況

WG8は、ナノカーボン材料、特にグラフェンとカーボンナノチューブを担当しています。日本がコンビナーを取り、従来からリーダーシップをとっていますが、近年は海外からの提案が圧倒的に多く、どちらかと言えばディフェンシブなスタンスを取らざるを得ない状況が続いています。毎回20~30件と多数の審議案件があり、2日以上の日程を確保しても議論が十分にできなくなるようなコンビナー泣かせのWGと言えます。
今回は24件を越える提案に関して審議が行われ、ドイツ、カナダ、フランス、スペイン、デンマーク、米国、韓国、中国、日本の9カ国、30人程度で議論が進められました。提案対象となるナノカーボン材料は、カーボンナノチューブ関連の2件(うち1件は日本提案)を除いて全てグラフェン関連であり、世界各国が戦略的かつ重点的に進めています。

コンビナーによる会議の冒頭の様子 コンビナーによる会議の冒頭の様子 国別でも特色が出ており、欧州では、EUの大規模プロジェクトであるグラフェンフラグシップの存在感が大きく、プログラム成果の精力的な提案、中でも基板上のグラフェンに関する評価方法に重点を置いているようです。中国や韓国からもグラフェンに関する提案は多く、特に中国は、電池材料応用を想定したグラフェンパウダーに力点を置いていることが伺えます。
カーボンナノチューブ発祥の地でもある日本としても、独自のナノカーボン標準化に関する戦略をたてて進めていきたいと考えております。

WG9の活動状況

WG9は、TC113の中でナノ太陽電池や有機エレクトロニクスを担当しています。現在審議している5件のうち3件が日本からの提案で、日本がコンビナーを取ってリーダーシップを発揮しています。
審議案件のうち、太陽電池の屋内光での評価方法(62607-7-2)は、JEITAのナノエレクトロニクス標準化専門委員会で策定したJEITA規格ET-9101「屋内光下での太陽電池の性能評価方法」(2016年制定)を日本から国際提案したものです。昨今のIoTの普及に伴い、将来多くのセンサがネットワークに接続された場合の電源として、屋内光で発電するエネルギーハーベスティング用途に、バンドギャップの大きなDSCやOPV等の太陽電池が期待されています。

議論の様子 議論の様子 屋内では様々な照明用光源があり、発電効率の評価が複雑になるため、その評価方法の標準を提案したものです。本技術はIEC TC82(太陽光発電システム)や、SEMI(半導体の業界団体)とのリエゾンの確立も進めているところです。
薄膜デバイスに関しては、慶応大学から提案されている有機トランジスタの基礎物性評価方法に関する2件の標準が議論されました。

今後に向けて

IEC TC113は発足後10年以上が経過し、活動が活性化しています。中でもグラフェン関係の規格提案が急増していることが今のトレンドとして挙げられます。欧州のグラフェンフラグシップとの連携や、欧州の計量標準機関の連合体であるEURAMETとも良好な連携ができております。
日本は、今回の会議でもドイツと並んで大きな存在感を発揮しました。日本提案は全て計画通りの承認を得て次のステップにそれぞれ進むこととなりました。今後も、各国提案に対して日本が不利にならないよう、且つ良い規格になるよう積極的に対応していく所存です。
ナノテクノロジーは日本が世界的に強みを持っている領域です。標準化でも優位性を維持すべく、皆様のご参加・ご支援をお願いいたします。