Activity
技術戦略部活動報告

ISO/IEC JTC 1/SC 39
活動紹介と横浜国際会議主催の報告

2019年5月13日(月)~5月17日(金)横浜にて、ISO/IEC JTC 1/SC 39(ITのおよびITによるサステナビリティ)WG1、WG3、Plenary会議を日本主催で開催しました。 参加国数は10カ国(日本、韓国、中国、米国、カナダ、ドイツ、英国、フィンランド、ポーランド、オーストリア)、35名の各国代表、エキスパートが参加し、活発な討議が行われました。以下では、ISO/IEC JTC 1/SC 39の活動紹介と横浜国際会議結果を報告いたします。

ISO/IEC JTC 1の概要

ISO/IEC JTC 1とは、ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)とIEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)の第一合同技術委員会(Joint Technical Committee 1) のことであり、情報技術(IT)分野の標準化を行うための組織として1987年に設立されました。現在22の分野のSC(Subcommittee)に分かれて活動しています。
JTC 1は、米国、英国、ドイツ、フランス、カナダ、中国、韓国、日本など34カ国のPメンバーと65カ国のOメンバーから構成されています。

ISO/IEC JTC 1/SC 39の概要

社会におけるデータセンターの役割が増大するとともに、データセンターの環境負荷への関心が高まっている中、2012年に設立されたSC 39では、データセンターのエネルギー効率指標の提案と標準化が進められています。
当初、傘下にWG1、WG2の2つのWGを設置し活動を開始しました。WG1は、データセンターの資源効率を扱っています。WG2は、グリーンICTとして、データセンターから端末までを含む情報システム全体の資源効率を扱っていましたが、2018年で活動を終了しました。また、WG3が2017年にデータセンター設備の標準化を対象として設置され、これまでより幅の広い範囲をカバーする事になりました。
参加国は、Pメンバー19カ国、Oメンバー7カ国であり、積極的な活動国は、日本、米国、英国、ドイツ、オランダ、フランス、フィンランドです(幹事国:米国/ANSI、議長:米国)。
なおSC 39は、JEITAがJISC(経済産業省/日本工業標準調査会)から国内審議団体を受託しております。

SC 39のこれまでの活動と成果

SC 39に設置されたWGの活動を以下に紹介します。

WG1(コンビナ:米国)

WG1は、データセンターの効率指標(KPI:Key Performance Indicator)を主に扱っています。以下の5つのプロジェクトについては、2017年10月までにすべてIS(Intrnational Standard)として発行されました。

  • ・ISO/IEC 30134-1 Overview and general requirements(英国提案)
  • ・ISO/IEC 30134-2 PUE (Power Usage Effe ctiveness)(米国提案、日本もエディタ)
  • ・ISO/IEC 30134-3 REF (Renewable Energy Factor)(日本提案)
  • ・ISO/IEC 30134-4 ITEEsv (IT Equipment Energy Efficiency for servers)(日本提案)
  • ・ISO/IEC 30134-5 ITEUsv (IT Equipment Utilization for servers)(日本提案)

DPPEを構成する4つの国際標準 DPPEを構成する4つの国際標準 これにより、日本がSC 39設立当初から提案してきた4つの指標によって、データセンター省エネの全ての側面を評価する手法であるDPPE(Datacentre Performance Per Energy)を構成するPUE、 REF、 ITEEsv、 ITEUsvがすべて国際標準となりました。これで、図のように、DPPE方式によるデータセンターの省エネ目標管理ができることになります。
現在日本からは、これまでも検討されてきたIT機器のみならず、ソフトウエアによるIT機器の使い方も含めたエネルギー効率指標の必要性を唱え、APEE(Application Platform Energy Effectiveness)というKPIを起案しております。本指標を国際標準規格とすることでソフトウエアによる省エネ技術の開発をより一層促進させて、日本が持つ優位なソフトウエア技術を広く普及出来るよう日本として主体的に推進しています。

WG2(コンビナ:韓国)

韓国のエディタを中心に、分散・集中など各種コンピューティングモデルのエネルギー効率を比較・計算する手法を開発し、TR(Technical Report)として発行し2018年で活動は終わりました。
ISO/IEC TR 30132-1:2016
Information technology -- Information technology sustainability -- Energy efficientcomputing models -- Part 1: Guideline for energy effectiveness evaluation

WG3(コンビナ:ドイツ)

欧州のETSI(欧州電気通信標準化機構)が作成し、欧州標準(EN50600)として発行されたデータセンターの設備ガイドを国際標準とするTSの提案が英独共同でなされ、 2017年に発行されました。これは、欧州の環境に基づいたものであるため、 日本を含むアジア、米国などの環境を踏まえた全世界ベースのものを作成しISとするために、WG3が設置されました。ここで、地震対策についての考察が欧州版ではなされていないことから、日本の地震対策についてもドキュメント化したいということになりました。

ISO/IEC JTC 1/SC 39 横浜国際会議

WG1、WG3、Plenaryの状況を説明します。

WG1会議
  • ・日本提案のAPEEについては、2018年10月以降に開催されたAdhoc会議での検討結果を報告し、CD投票に向けて各国の理解を得ました。APEEについては、 アプリケーションのタイプ別に適したベンチマークソフトを選定し、これで省エネ性能を測定することにしています。
  • ・2019年度からの日本の改正省エネ法でも採用されるサーバー省エネ度の測定方法である米国提案のSEEM(Server Energy Effectiveness Metric)について、5月30日締め切りのDIS投票期間中であったため、今回の会合では投票中文書に対するエキスパートによる議論が行われました。日本からは、日本の意見を反映させるように主張しております。
  • WG1 Meeting 日本提案のAPEEの議論の様子 WG1 Meeting 日本提案のAPEEの議論の様子 ・ドイツ提案のWUE(Water Usage Effectiveness)、 CUE(Carbon Usage Effectiveness)について、NWIP投票の結果nominated expertが不足していたので、カナダ、日本が参加することで承認されることになりました。現在のWDを議論し、修正版をCD投票にかけることになりました。
WG3会議

WG3 Meetingの様子 WG3 Meetingの様子 WG3ではドイツから提案され既にTSとして承認されている、EN50600シリーズをベースとする7つのデータセンター可用性標準の文書についてIS化に向けて検討されています。今回の会合では、22237-1(general)、-3(Power Equipment)、-4(Cooling Equipment)の検討を行いました。日本としては、22237-1で定義する可用性(availability class)について具体的な実現手段を規定するのではなく、目標とする可用性水準を規定するよう主張し、誘導しました。議論の結果、それぞれCD投票に進めることになりました。また、日本のJDCC(日本データセンター協会)が発行するデータセンターファシリティガイドの地震関連記述のTR化についても22237-50として議論がなされており、今回の会合での結果PDTR投票に進めることになりました。

Plenary会議

Plenary Meeting 中野課長ご挨拶の様子 Plenary Meeting 中野課長ご挨拶の様子 横浜国際会議の最終日である5月17日にPlenary会議が開催されました。会議の冒頭にはJISCを代表され、経済産業省産業技術環境局国際電気標準課中野課長より、2019年7月施行の新JIS法には標準化活動に対する官民の協力が盛り込まれることのほか、同年6月には大阪にてG20が開催され、SDGs(Sustainable Development Goals)が重要なトピックであることなど、SustainabilityをテーマとするSC 39がSDGsの実現に重要な役割を持っており、JISCとしても引き続き支援する旨のご挨拶を頂戴いたしました。

主な審議結果

  • ・日本提案のAPEEについては、今回のWG1会議の議論を反映させたドラフトを2019年5月末までに提出し、8月29日締め切りのCD投票にかけることになりました。
  • ・WG1、WG3で論議された30134-8 CUE、30134-9 WUE、22237-1、-3、-4についてもCD投票に進むことになりました。
  • ・米国から提案のあった、SC 39のタイトルとスコープの修正について、スコープはJTC 1に承認されたが、タイトルは長いということで再提案になったので、下記タイトルをJTC 1に要望することになりました。
これまでのタイトル:
Sustainability for and by InformationTechnology
再提案されたタイトル:
Sustainability, IT & Data Centres

スコープはJTC 1で下記のもので既に承認済みです。
Standardization of assessment methods, design practices, operation and management aspects to support resource efficiency, resilience and environmental and economic sustainability for and by information technology, data centres and other facilities and infrastructures necessary for service provisioning.

SC 39国際議長のMr. Jay Taylorから以下のように、日本の国際会議主催に関して、国内委員会とJEITAに対する感謝の意を示すコメントをいただきました。
横浜国際会議会場内にて 横浜国際会議会場内にて As Chairman of JTC 1/SC 39 I wish to express my appreciation to the Japan National Committee and JEITA for the venue and organization for the SC 39 Plenary in Yokohama Japan. The facility, the logistics details and organization made the working group meetings and plenary run effectively and smoothly. I appreciate the leadership and initiative on this meeting.

最後に

ソーシャルイベントの様子 ソーシャルイベントの様子 今回の横浜国際会議におきましては、SC 39のタイトルに『Data Centres』という文言が明示される方向となり、今後の一層活発な議論につながるものと思われます。
また、Sositey5.0の実現を目指すというJEITAの活動方針を鑑みても、データセンターの役割、そしてSC 39の活動もますます重要になるため、引き続きSC 39での標準化活動を積極的に推進してゆきます。
なお、今回の横浜国際会議開催に際して、会議室等ファシリティを提供いただいた株式会社日立製作所をはじめ、国内関係者のみなさまには多大なご支援・ご協力を賜り、1週間の会議を成功裏に終わらせ、海外メンバーからも厚い感謝のお言葉をいただくことができました。末筆ではございますが、改めて関係者のみなさまにお礼申し上げます。