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部品・デバイス部活動報告

電子部品・信頼性技術強化の取り組み/
MSA実施ガイドの発刊について

電子部品の信頼性の維持・強化と啓発活動を行うことを目的として、2014年6月に信頼性技術強化WGを立ち上げてから今日に至るまで様々な活動を進めています。 その中の一つとして、信頼性や安全性に関するガイドの作成があり、これまでに「電子部品のFMEA実施ガイド」、「電子部品のSPC実施ガイド」、「医療機器用電子部品の信頼性ガイド」の発行、「部品安全アプリケーションガイド」の改正発行を行ってきました。 ここでは、測定データの誤差を解析し、定量的に評価するための手法であるMSAの概要と、本WG活動の成果物として、3月に発行した「電子部品のMSA実施ガイド」について紹介いたします。

MSAとは

MSA(Measurement Systems Analysis:測定システム解析)は、測定データの誤差を解析し、定量的に評価するための手法です。測定データを得るには測定機器の他に、測定用の取付け治具やソフトウエア、作業者、作業方法、測定環境などが必要であり、これらが測定データの変動に影響を与える要因となります。測定システムとは、これらの要因を含めた測定データを得るプロセスの総称です。測定システムによって得られた測定データに基づいて、電子部品の設計や製造工程の管理、検査、特性試験などが行われるので、測定システムの信頼性を確保することはとても重要なことです。
MSAは、測定データを統計的に分析・評価することによって、測定システムによる変動が許容できるかどうかを判断するための手法です。自動車産業向けの品質マネジメントシステムの技術仕様であるIATF 16949:2016においては、コアツールの一つとしてサプライヤーへの要求事項となっています。

MSAの主な目的

MSAは、管理項目(工程、検査、試験)において、その測定システムが適正であるかどうかを評価するために行います。結果が適正でない場合には、測定システムのどこに問題があるのかを調査して、改善を図ることになります。

MSAの実施

MSAは次のような場合に実施します。

  • (1) 測定システムの新規導入時
  • (2) 測定システムに変化点が生じた時(測定結果に影響する修理・調整を行った後)
  • (3) 測定システムの定期点検時
    (実施において、同一のシステムが複数ある場合には代表システムの検証でもよい)
  • (4) 部品の規格値や管理値を変更した時

測定システムの変動の種類により表に示す評価を行います。

測定システムの評価

測定システムの評価は、変動の種類で決められた数の部品サンプルを選び、決められた回数測定します。得られたデータをグラフ法や数値法、範囲法、分散分析などで解析して、測定システムの受容れ判定を行います。

【測定システムの評価方法】

変動の分類 評価方法 評価項目
計量値 位置の変動 安定性 一人の測定者が、同一部品の同一特性を同じ測定器を使って、ある程度の時間間隔をおいて測定したときの測定平均値間の差(測定値のドリフト)を求める 安定性
偏り 測定平均値と基準値との差を求める 偏り
直線性 測定システムの使用(測定)範囲全体にわたる偏りの傾向を求める 直線性
幅の変動(GRR) 繰返し性 一人の測定者が、同一部品の同一特性を同じ測定器を使って、数回にわたって測定したときの測定値のばらつき幅(装置変動)を求める GRR(繰返し性・再現性)
再現性 異なる測定者が、同一部品の同一特性を同じ測定器を使って、数回測定したときの測定者ごとの平均値のばらつき幅(測定者変動)を求める
計数値 位置と幅の変動 繰返し性、再現性 測定者間の判定の一致度,基準-測定者間の一致度を通して、測定システムの有効性を評価する 仮説検定分析-クロスタブ法
偏り、繰返し性 go/no-goの境界領域をいくつかに区分して測定し、ゲージの性能を評価する 信号検出法

「電子部品のMSA実施ガイド」について

MSAは、測定データの誤差を解析し、定量的に評価するための手法です。
しかし、解析には統計を用いるためにかなり難解であり、それを理解して使いこなすのは不可能にさえ思えてしまいます。
電子部品のMSA実施ガイドでは、電子部品メーカーが目的に合わせてMSAをどのように実施すればよいのか、そして得られたデータをどのように解析し、判断すればよいのかをわかりやすく解説いたしました。
また、MSAの実施には部品の反復測定したデータが必用ですが、測定により部品が破壊されてしまう反復不可能な破壊測定システムについても取り上げています。
 本ガイドの活用を通じて、日本の電子部品の品質・信頼性がさらに高まることを願っています。

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電子部品のMSA実施ガイド

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