活動報告
関西支部
Activity

第93回 機器・部品メーカー懇談会

関西支部・部品運営委員会では11月22日(木)にホテルグランヴィア大阪で標記の懇談会を開催しました。

部品運営委員長挨拶

最初に古橋健士 委員長(ホシデン(株)社長)より挨拶がありました。
部品業界のこの10年を振り返ると、AVC向けの売上げ構成比は2007年の33%から17年に半減、代わって自動車向けが17%から26.5%に拡大しました。「その他」であった医療・ヘルスケアとエネルギーは、それぞれ独立したカテゴリーとして重要性を増しています。本日は、10年前には想定しなかった各社様からご講演をいただけることになりました。感謝し、期待して拝聴したいと存じます。

手段としてのIoTはものづくりに何をもたらすか

三菱電機(株)

大谷治之 FAソリューションシステム部長よりご講演いただきました。
「e-F@ctory」ソリューションでは、生産現場データをIoTでリアルタイムに収集する「見える化」、そのデータをエッジコンピューティングで一次処理しITシステムに連携させる「観える化」、その解析結果を生産現場にフィードバックする「診える化」(「みえる化3」)により、工場の生産性からセキュリティまで改善します。ソフトベンダーや機器メーカー等、約640社と連携する「e-F@ctory Alliance」で、人+作業支援、人と機械の協働、知能化+自動化に実績を挙げると共に、エッジコンピューティングの強化に向け「Edgecross」プラットフォームの活用を進めるコンソーシアムも主導しています。クラウド上のAIと連携し、「すぐに動く、無駄がない、止まらない」スマート工場の具現化を進めますが、IoTはあくまで手段であり、目的と最適手段の見定めが重要と考えています。

ソフトバンクの最近の取り組み
~5G、IoTについて~

ソフトバンク(株)

清水繁宏 執行役員並びに横井直樹 統括部長よりご講演いただきました。
ソフトバンクグループは、通信・ネットワークからデジタルマーケティング、ロボット、AI/RPA(Robotic Process Automation)等の最先端テクノロジーまで広範なサービスを提供、SBG/Softbank Vision Fundでは、次世代イノベーションを起こし得る企業やプラットフォーム・ビジネス、60数社に投資も行っています。5G×IoTの取り組みでは、低消費電力・低価格のNB(Narrow Band)IoTに、IPアドレスを用いないNIDD(Non-IP Data Delivery)を活用し、高セキュリティ、超低消費電力、導入工数の削減を可能にします。データ量拡大に対応し、リアルタイム性も確保すべく、基地局システムにエッジコンピューティングを配するMEC(Multi-access Edge Computing)の導入を進めています。部品メーカー様には、より低消費電力・低発熱のデバイス開発と、分解能の向上で高精度を求められる時刻同期の解決に向けた技術開発をお願いしたいと存じます。

キャタピラー油圧ショベルの現状と将来

キャタピラージャパン合同会社

豊浦信海 代表執行役員よりご講演いただきました。米国キャタピラー社は建設・鉱山機械、エンジン、タービン等を手がけ、従業員は約10万人、売上げの6割が米国外です。日本では1963年に三菱重工と合弁でブルドーザーを生産開始、油圧ショベルが評価されて成長し、2012年にキャタピラー日本法人となりました。油圧ショベルは作業目的に応じた装着機器の活用で汎用性が高く、日本は開発・生産拠点、市場として重要です。建設業界では高齢化・人手不足等を背景にICT活用が注目を集めます。日本では国交省が「i-Construction」を掲げて、施工プロセスのICT化が進んでいます。昨年投入した油圧ショベル新機種では全制御を電子化すると共に、姿勢センサー、高精度衛星測位システム、プログラマブルスイッチ等で操作性を向上、3Dマップと連携した制動も実現しました。今後は遠隔管理・自動化、ビッグデータ活用、電気化等に取り組み、ビジネスモデルとしてシェアリングの展開も見込みます。建機間連携(通信)、AI活用、セキュリティ等が技術課題ですが、10Gに耐えるセンサーなど過酷な環境での電子部品耐久性も求められます。

先端技術でサービスイノベーション

セコム(株)

小松崎常夫 顧問よりご講演いただきました。
1962年の同社設立時から警備に留まらない事業構想がありました。89年に「社会システム産業」元年を宣言、現在はセキュリティ、保険、メディカル等、広範な領域で、フィジカルとサイバーの融合による高度なサービスを展開しています。86年に研究所(現「セコムIS研究所」)を設立し、サービスのエンジニアリングに取り組みました。画像解析により単体で侵入者を認識する監視カメラ、迷子などの位置を把握し急行する「ココセコム」、ドローンによる空飛ぶ監視カメラ等、多くの技術・機器を開発、新たなサービスを創出してきました。昨年発表した「2030年ビジョン」では、変わりゆく社会に変わらぬ安心を提供し続ける「あんしんプラットフォーム」の構築を掲げています。Society 5.0を情報からサービスへのシフトと捉え、「サービス」チェーンの視点に立てば、お客様が真に望まれるポイントが見えて来ます。サービスは人の営みそのものであり、「もの」・「こと」に加えて「わけ」を重視してイノベーションに取り組む必要があります。

電子部品業界の現況と展望およびニチコンの取り組み

ニチコン(株)

最後に、部品運営委員会を代表し、ニチコン(株)の山本俊哉 事業戦略室長より、「電子部品業界動向統計」(JEITA電子部品部会)に基づく需要トレンドの報告と、同社事業・製品の紹介がありました。
アルミ電解コンデンサを主力とし、その技術を活用して小型リチウムイオン二次電池にも参入しました。フィルムコンデンサでは自動車向けパワエレ用が拡大しています。回路向けはEV関連が伸び、特に、2019年のFIT終了を追い風に、太陽光・系統電力とEVをつなぐV2H(世界初)、その進化版であるトライブリッドの蓄電システムが好評です。「製造業から創造業」を目指して、エネルギー・環境・医療、自動車・車両、白物家電・産業用インバータ、情報通信の4市場に重点的に取り組んでいます。自動車向けには製品ラインナップの拡大、特にEV/HVインバータ用途に注力します。IoT関連ではワイヤレスエッジデバイスに注目しています。ハーベスタ蓄電用途の小型リチウムイオン二次電池を来年投入、長寿命、急速充放電、寒冷地使用可などの特長を訴求して行きます。

Society 5.0の推進が各方面で取り組まれる中、従来に増して幅広い業界からご講演をいただき、電子部品事業に期待する貴重なご意見も伺い、懇親会を含めて、活発で有意義な情報交流の機会となりました。