活動報告
標準化センター
Activity

IEC TC119釜山会議の概要および
標準開発状況


IEC TC119総会の参加者
第82回IEC General Meetingに合わせて、2018年10月22日~26日にTC119(プリンテッドエレクトロニクス)の総会とWG会議が韓国の釜山市にて開催されました。

設立8年目を迎えたIEC TC119の現在

TC119は2011年に設立されて以来、国際標準化を通して市場開発を牽引すべく活動しています。これまでに発行された国際標準の半数が日本提案です。現在、TC119の登録エキスパートは121名で、全体で15件の国際標準(IS)と1件の技術報告(TR)が成立しています。

TC119には以下の作業グループ(WG)が設置されています。

  • WG1(Terminology)・WG2(Materials)・WG3(Equipment)
  • WG4(Printability) ・WG5(Quality assessment)

特に、WG2は日本が得意とする材料関係を取り扱う組織であり、日本がコンビナのポジションを確保して主導しています。

WG2(Materials:マテリアル)
の活動状況

日本主導で確立したプリンテッドエレクトロニクス材料の国際標準化体系に基づき、ウェアラブルデバイスなどの用途も先取りしながら、具体的な標準づくりを各国と協調して行い、プリンテッドエレクトロニクス産業の発展加速に寄与していきます。
13回目を迎えたWG2会議では、6カ国から29名が参加し、日本からは最多数の11名が出席しました。現在動いているプロジェクトは5件で、そのうち3件が日本提案です。注目度の高いウェアラブルデバイス向け機能性インク(IEC 62899-202-4)は、ストレッチ材料特有の評価法に関してのものであり、関係国との事前議論が功を奏し、CDからCDVへと前進しました。また、プリンテッドエレクトロニクスで広く使われる絶縁インク案件(IEC 62899-204)は、CDVで受けた多くのコメント対応を短期間でまとめあげ、FDISへ進むことが承認されました。さらに新しい提案が韓国、フィンランドから計4件出され、ますます活発な様相を呈してきています。

WG3(Equipment:装置)の活動状況

世界的に日本のベンダーが強い印刷機(装置)の技術を生かした、プリンテッドエレクトロニクスの作成装置の標準化を行っています。強い産業を守りながら日本の強みを活かして産業形成を行うべく、日本からは装置産業の成長に役立つ標準を提案し、成立させました。IEC 62899-302-1(ロールtoロール装置の機械寸法)。
一方、海外から日本の強みのノウハウを引き出そうとする動きに対しては、産業界が不利にならないよう守りの標準化を行っています。最近、インクジェット印刷法の品質に関する標準策定の機運が高まってきています。
釜山会議では、山形大学のご助力を得て、新たにインクジェット印刷の品質評価法を日本から提案し、規格制定に進むことについて国際合意を得ました。今後、この分野の標準化に取り組んでまいります。

WG4(Printability:印刷適性)
の活動状況

日本が主導して印刷適性に関する標準化グランドデザインを作成し、これに従って印刷パターンの形状計測方法と評価項目ごとの基本パターンの国際標準化を進めていきます。
エレクトロニクス製造における印刷パターンの品質とデザイン再現性に係る計測方法や評価用基本パターンについて、日本が提案し国際標準化したIEC 62899-401(概観)に従って個別項目の標準化を進めており、既に韓国提案のIEC 62899-402-1(線幅計測方法)と日本提案のIEC 62899-403-1(マシン由来評価用基本デザイン)が国際標準化されています。
釜山会議では、パターン水平方向形状にあたる端面うねりと空孔の計測方法に関する標準化原案について議論を行い、それぞれCDV、NPの次ステージに進むことが決まりました。また、膜厚や表面形状と云ったパターン垂直方向形状の計測方法については標準化の前段階として技術文書(TR)を日本主導で作成することが決まりました。今後は計測方法に関する標準化の動きを睨みつつ、評価用基本パターンの標準化を日本が提案することで印刷エレクトロニクス製造の品質管理を日本が主導する素地を構築していきます。

WG5
(Quality assessment:信頼性評価)
の活動状況

プリンテッドエレクトロニクスデバイス(中間製品)の信頼性評価に関する標準化を推進しています。日本提案の推進と新規提案投入を軸に各国提案への議論、対応を進めます。
プリンテッドエレクトロニクスをベースにしたデバイスとそのシステムを取り扱っています。具体的には、プリンテッドエレクトロニクスによるガスセンサーが提案されてきていますが、そのセンサーだけの標準化に留まらず、そのセンサーを駆動させ異常の信号を発するシステムまで考え、その信頼性の評価を定めなくてはなりません。なぜならば、人の命に係わる問題だからです。
今回の釜山会議の成果は3つあります。その1つは、上述の複雑な体系を以下のように枝番をつけて整理したことです。

  • Part 1: Single module-501 series : Batteries, -502 series : OLED, -503 series : TFTs, -504 series : Smart Tag, -505 series : Sensors, -506 series : その他
  • Part 2: Systems (ex. Smart Labels)

残念ながら、Part 2のシステムについてはまだブランクの状態ですが、WG5の規格開発計画が明確になりました。
2つ目の成果は、-503 seriesにおいて、日本提案の接触抵抗の測定方法が新規提案として承認されたことです。正式には、Measuring method of contact resistance for the printed thin film transistor (IEC 62899-503-03 NP)です。
3つ目の成果は、日本から提案していた、Mechanical and environmental stress test for flexible OLED elementsが投票段階に進んだこと(IEC 62899-502-02 CDV)です。

今後の活動への期待

フレキシブルデバイスを実装する新しい製造法や信頼性に関わる規格案が増えてきており、ビジネスの動きと連動した国際標準化への対応の重要性が増してきていると感じた会議でした。
TC119国内委員会のミラーとなっているJEITAプリンテッドエレクトロニクス標準化専門委員会では、我が国の優れた技術を保有している関連企業(デバイス、プロセス、装置、材料、製品等)が横断的に集結し、産官学共同で、日本からの標準化提案の作成や各国からなされる提案に対するコメント発信や投票案件を審議しています。委員会に参加することで世界のトレンドをいち早く把握することができます。この分野において、標準化を進め市場拡大やビジネス展開を考えている会員企業の皆様の積極的な参加をお願いします。

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