活動報告
標準化センター
Activity

三次元CAD情報標準化セミナー
実施報告


三次元CAD情報標準化セミナーの会場風景
2018年11月1日(木)にHORIBA BIWAKO E-HARBOR(滋賀県大津市)で、2018年11月29日(木)に川崎市産業振興会館(神奈川県川崎市幸区)で、三次元CAD情報標準化専門委員会(以下、専門委員会)主催の三次元CAD情報標準化セミナーが開催されました。経済産業省プロジェクトの各種ITツールの活用を保証するデータ基盤の国際標準化委員会から三次元CAD 情報の利活用に着目した活動報告、設計情報である3DAモデル(三次元製品情報付加モデル)および、3DAモデルを元にものづくりの各工程での情報と連携するDTPD(デジタル製品技術文書情報)で、設計情報の正確な伝達と部品製作・測定での標準化による効率化と高品質化の活動報告が紹介されました。参加者には製品開発プロセスの分断を3DAモデルとDTPDの利活用で解決するためのヒントになったと思います。報告の概要をご紹介します。

各種ITツールの活用を保証するデータ基盤にツールの活用を保証するデータ基盤に関する国際標準化

ISO TC184/SC4推進協議会議長並びにデータ流通基盤革新のための国際標準化委員会委員長(当時)の座間宏一氏から、「デジタル情報活用の方向性」と題して、TC184/SC4(産業データ)領域での国際標準化活動を通して、標準化を軸とした産業界の動向のお話しをしていただきました。デジタル技術の発展により、製品開発での情報伝達が、現在の3Dデータと図面の併用が数年先には3D図面(3DAモデル)に置き換わると予想されます。企業グループや産業界を越えて、「ものづくり領域(生産準備・生産・販売・保守)」で更なる標準的な3Dデータを利活用する仕組みが必要です。そのためにTC184/SC4推進協議会がTC184/SC4国内対策委員会と連携して産業界としてISOへの働き掛けを強化することを目的に設立されました。2015年から2017年まで、経産省プロジェクト『省エネルギーに関する国際標準の獲得・普及促進事業(省エネルギー等国際標準開発(国際標準分野))各種ITツールの活用を保証するデ-タ基盤に関する国際標準化』として活動し、日本発の同一性検証によるデジタルデータの信頼性保証に関する国際規格ISO 10303-62の発行に至りました。製品開発に必要不可欠なデータ変換での製品データ(デジタルデータ)の信頼性を保証する重要な規格です。製品データ(デジタルデータ)の取引が促進されます。産業界として標準の利活用を活性化するために、膨大な標準データ群ISO 10303-224(STEP AP242)の調査や標準データ群を利用する設計クラウド環境の実証実験に取り組まれています。大変興味深いお話しをお聞きすることができました。

3DAモデルとDTPD、戦略と効果と
ビジョン

①3DAモデルとDTPDの過去・現在・未来

連続的な製品開発プロセスを実現するために、1980年代から欧米日の電機精密製品製造企業に3次元CADが配備されました。日本が採用した図面レスでは、図面情報を完全に3Dデータ化することができず、3Dデータと図面の2重管理で連続的な製品開発プロセスの実現には至っていません。欧米が採用した製図レスでは、見直しをした設計情報を全て3Dデータに入力して、3Dデータによる連続的な製品開発プロセスを実現しつつあります。このことから、2012年に専門委員会では設計情報の見直しと統合化をした3DAモデルおよび、3DAモデルを元にものづくりの各工程での情報と連携するDTPDのコンセプトを作りました。電機精密製品産業界での3DAモデルとDTPDの利活用を促進するために6つの要件定義をして、3DAモデルでの幾何公差による設計指示方法、金型加工および板金加工における3DAモデル生成要件確立、3DAモデルとDTPDの標準化、3DAモデルとDTPDのモデリング機能実現の働きかけの活動が行われています。

【3DAモデルとDTPDに対する6つの要件定義】

3DAモデルとDTPDの適用調査では、前回(2014年度専門委員会内調査)は試行まででしたが、今回(2018年度専門委員会内調査)は14%が日常的に利用しているとの報告がありました。課題の解決と利用技術の深耕化により3DAモデルとDTPDの適用拡大が期待されます。3DAモデルとDTPDは、IoT、CPS、Digital Twin、製造プラットフォーム、Connected Industriesなどの新しいものづくりに対しても基盤データとなることから、仕様などの情報連携の拡張と、シミュレーションとの連携を推進していきます。

②3D正運用とCADビューワでの機能実現

3DAモデルおよびDTPDの作成および流通に関して3つの報告がありました。3DAモデルユースケースでは、専門委員会で標準的な3種類の機械(板金加工部品、組立品、樹脂成型・金型部品)の設計情報を3次元CADで作成する手順を定義し、主要な3次元CADで実際にモデリングして機能を評価しました。CADベンダーへの機能改善要望に結び付けており、市販の3次元CADで一部の機能が実用化されています。DTPDユースケースは3DAモデルユースケースの3種類の機械の製造情報を主要なDTPDツール(ビューワ、CAM、CAT、CAEなど)で実際にモデリングして機能評価をまとめています。DTPDベンダーへの機能改善要望に結び付けていく予定です。3D正運用はCADデータに限定した設計情報の技術的なやり取りから製品開発の実業務に拡大した時に、3DAモデルとDTPDの運用と課題を検討したものです。16種類の3D正運用プロセスを、3D正運用ガイドラインにまとめて発行しています。サプライヤーや他産業界から3DAモデル・DTPDの流通に対する課題を集約したいと考えています。

製造・計測工程における3DAモデル
からDTPD生成の技術的検討と考察

①板金部品における新しい幾何公差一括指示の効果検証

電機精密産業製品は美しいデザインを実現するために自由曲面を伴った部品が多く、これらの部品の設計意図を示す指示と、設計意図とおりに作られているのかを確認するための検査が重要です。指示が増えると設計者に負担が掛かるので、専門委員会では新しい幾何公差一括指示方式を開発して、部品や製品の基準点から段階的に公差指示を別途することで、設計者に負担を掛けずに指示ができます。複数の製造サプライヤーに板金部品3DAモデルの製造発注をしても合格品(部品形状が公差域内に収まっていること)が得られるかどうかを実証検証した報告がありました。板金加工指示の解釈に基づく具体的な製造方法は製造サプライヤーのノウハウに関係する部分で異なることが考えられます。実証検証の結果、合格と不合格が両方得られました。不合格箇所に関しては製造サプライヤーとの間で追加指示を検討して、専門委員会発行の3DAモデル板金部品ガイドラインにまとめる予定です。

【板金部品における新しい幾何公差一括指示の効果検証】

②複合カラーマップ作成自動化検討による計測工程の効率化

板金部品における新しい幾何公差一括指示の効果検証の中で、新しい幾何公差一括指示方式が該当する部分の非接触測定結果処理に時間が掛かることが判明しました。日常の測定業務でも同様な課題が考えられます。従来は測定結果を示すカラーマップを指示ごとに複数個作り合体させる必要がありました。新しい幾何公差一括指示方式に関する形状定義と指示が重なった箇所の判断(形体解釈)を具体的に定義して、これに基づきCATにおける複合カラーマップ作成を試行し、その機能と結果を確認しました。この機能が市販のCATに実装されることを大いに期待しています。

3DAモデルとDTPDの標準化活動

3DAモデルとDTPDの標準化活動は専門委員会でガイドラインおよびJEITA規格にまとめたものをJIS化またはISO化を進めています。3DAモデルの規格化は、一般財団法人日本規格協会のJIS原案作成委員会に参画し、一般社団法人日本自動車工業会電子情報委員会デジタルエンジニアリング部会メンバーと協力してデジタル製品技術文書情報(DTPD)JIS B 0060の原案策定を進めています。3DAモデルの主要項目はJIS発行および原案完了しており、現在は3DA組図の原案を開発しています。現在の電機精密製品産業界ではユニット単位での取引が増えてきており、3DA組図の規格も重要です。専門委員会が開発した新しい幾何公差一括指示方式はISO TC213(製品の幾何特性仕様)に参画して、フランス提案ISO 22081に対し、新しい幾何公差一括指示方法を提案しています。