柵山会長記者会見
(「Society 5.0」の実現に向けたJEITAの取り組みを発信)
2018年12月18日に柵山正樹会長による記者会見を開催し、「電子情報産業の世界生産見通し」、およびJEITAの事業全般に関する発表が行われました。当日は61名の報道関係者にご出席いただき、発表内容は報道機関各社によって広く社会に発信されました。
発表内容のハイライト
①課題解決型の業界団体への取り組み
JEITAは、世界に先駆けた超スマート社会の実現「Society 5.0」の推進を事業指針として掲げ、電子部品、電子デバイス、電子機器、IT・ソリューションサービスなどを中核とした、あらゆる産業をつなぎ、業種・業界を超えて社会課題に向き合う課題解決型の業界団体を目指しています。重要なことはさまざまな産業との「共創」を進めることです。
具体的な取り組みをご紹介します。2017年に発足させた、スマートホーム部会です。会員企業はもちろんのこと、住宅や住宅設備、電機、通信など他の業界団体とも連携して、データを共有・活用するための取り組みを進めています。スマートホームは宅内外のあらゆる機器・住宅設備・サービスが連携することで初めて実現するものです。業界を超えた連携を進めるにあたり、現在、その枠組みとなる、機器・住宅設備・サービス提供事業者が共通で活用できるデータカタログの構築を進めています。
Society 5.0は製造業のみならず、サービス産業である小売りや観光など、さまざまな産業が連携することで、個人の暮らしをより豊かにする未来を実現するものです。産業と産業の連携が披露される場、あらゆる産業による「共創する未来」を発信する場が、JEITAが主催している「CEATEC JAPAN」です。
家電見本市の枠を超えた、「CPSとIoTをテーマとするSociety 5.0の展示会」として生まれ変わったCEATEC JAPAN には、本年もIT・エレクトロニクス業界だけに留まらず、様々な産業・業種の出展企業から、データ連携・利活用によって社会課題を解決する、革新的なソリューションサービスの提案や新たなビジネスモデルの披露が相次ぎました。
また、会場には世耕経済産業大臣、石田総務大臣、平井IT担当大臣をはじめ、官公庁や各企業のイノベーター、そして未来を担う学生まで、実に多種多様な方々にお越しいただきました。特に学生は、昨年と比較して約2,000名近い増加となったことに加え、工学系のみならず、医療系など他分野の学生も多数来場していただきました。次世代を担う学生たちが業際分野を見て聞いて考える絶好の機会として、CEATECをさらに発展させていきたいと考えています。
他にも、新たなイノベーションや付加価値を生み出し、国際社会でリーダーシップを取っていくために、日本企業の国際競争力向上に資する事業環境整備や、研究開発税制の要望、さらには海外の産業界と連携した、保護主義の拡大阻止と越境データ流通の自由化を目指す活動にも精力的に取り組んでまいりました。当JEITAは課題解決型の業界団体を目指し、今後もSociety 5.0に繋がる活動に邁進してまいります。
②電子情報産業の世界生産見通し
今年で13回目となる「電子情報産業の世界生産見通し」は、世界の電子情報産業の生産規模をデータにより明確にするとともに、世界における日系企業の位置づけを把握することを目的として、会員各社を対象としたアンケート調査をベースに、国内外の関連企業・団体の皆様のご協力を得て、毎年取りまとめています。
世界生産の状況と見通し
クラウドサービスの拡大によるソリューションサービスの需要拡大、IoT化の進展に伴う大容量データの高速処理のニーズ拡大などによって、半導体をはじめとする電子部品・デバイスおよびソリューションサービスが牽引し、2018年、2019年ともに、ドルベースで過去最高を更新する見通しとなりました。特に2019年は史上初めて3兆ドルを突破する見通しです。世界経済においては貿易摩擦などの不透明要素はありますが、社会課題解決に向けた生産性向上や新たな価値創造のためのIT投資は引き続き活発に推移すると考えており、今後もプラス成長が続く見通しとなっています。 品目別でみると、電子部品、半導体、そしてソリューションサービスが、2018年および2019年と過去最高の世界生産額を記録する見通しです。
日系企業の動向
2018年の海外生産分を含む日系企業の世界生産額は前年比1%増の39.1兆円を見込みました。日本経済は緩やかな成長が続いており、車の電装化率向上による半導体や電子部品搭載数の飛躍的増加、また、働き方改革や生産性向上に向けた法人向けのパソコンや情報端末の需要が好調に推移していることが背景にございます。国内生産額は12兆円で、前年の規模を維持する見込みです。
今後も、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会などに向けたインフラ整備の進展や、半導体や電子部品の搭載数増加などによる継続的な成長が見込まれています。2019年の日系企業の世界生産額は前年比1%増の39.6兆円で、プラス成長が続くと見通しました。国内生産額も、景気回復基調の維持とともに、2019年は前年比2%増となる12.2兆円と、プラス成長を見通しています。
③車とIT・エレクトロニクスの動向
ビッグデータ利用、人工知能、ネットワークなどの技術の進展により、IoTの時代が本格的に到来した現在、モビリティの分野においても、今まさに「CASE(ケース)」と呼ばれる大きな革命が進行しつつあります。
なかでも車は、機械分野のみならず、IT・エレクトロニクス分野をも巻き込み、業界の垣根を越えた変革が動き出しており、この潮流はますます加速していくものと推測されています。
本年の「注目分野に関する動向調査」では、車本体の進化に焦点を当て、自動運転車および環境対応車の世界生産台数を見通すとともに、車の進化を支える電子制御装置ECUとCASEからみた注目デバイスの世界生産を定量的に把握する調査を実施しました。
車の進化の見通し
自動運転車や環境対応車といった新しいタイプの車が2030年までにどれほどの規模になるのか、生産台数を予測しました。レベル3以上の自動運転車については、年平均65.8%で増加し、2030年においては約700万台になると見通しました。また、電気自動車などの環境対応車は、年平均20.1%で増加、2030年には約9,000万台になると見通しました。特に電気自動車は2030年には2,000万台を超え、車全体の15%を占めるまで拡大すると見通しています。
車の進化を支えるECUの生産額見通し
車の普及見通しの上で、その進化を支えるECUの市場規模を安全系、情報系、センシング系、環境対応系、パワートレイン系、ボディ系の6つの系統に分けて算出しました。全体では、年平均4.9%で増加していき、2017年の9.5兆円から、2030年には17.8兆円と約2倍の世界生産額になると見通しました。特に環境対応系は、年平均13.5%で増加していき、約5倍へと大きく成長する見通しです。
注目デバイスの生産額見通し
CASEに必要なデバイスについても市場規模を算出しました。これらは年平均10.8%で増加していき、2017年の3.5兆円から、2030年には13.3兆円と約4倍の世界生産額になると見通しています。個別にみると、CASEの「A:自動運転」に必要とされるカメラモジュールと、「E:電動化」に必要とされるインバータの生産数量が、それぞれ4.8倍、5.7倍と大きな成長が見込まれます。
まとめ
Society 5.0の未来に向けた取り組みが益々進展していくにあたり、今回、注目分野として取り上げたモビリティはもちろん、あらゆる分野において、IT・エレクトロニクスはこれからますます重要になると考えております。JEITAではあらゆる産業と連携しながら、Society 5.0の実現に向けた市場創出と事業環境整備に、より重点的に取り組んでいく方針です。
CEATECは2019年に20周年を迎えます。CEATECの変革を進めるJEITAとしては、CEATECをあらゆる産業・業種による、「共創」をベースにしたSociety 5.0の実現を目指す場として、今後さらに強化していきたいと考えています。テクノロジーは急速に発展していきますが、CEATECはこれからも、テクノロジーを見せる展示会ではなく、テクノロジーで社会をどう変えていきたいのかを発信する展示会として、豊かな社会の未来を描けるよう、取り組んでまいります。「CEATEC 2019」は、10月15日から18日の4日間、幕張メッセにて開催予定で、2月より出展者の募集を開始する予定です。
JEITAは産業と産業のつなぎ役として、新たなビジネス創出を促すことで、SDGsをはじめとする社会課題を解決し、世界に先駆けた超スマート社会の実現とともに、日本経済のさらなる活性化に貢献していきたいと考えております。政府をはじめ関係各所と密に連携しながら、会員の皆様とともに、積極的に事業を推進してまいります。
刊行物のご案内
電子情報産業の
世界生産見通し2018
(「注目分野に関する動向調査」付き)
- ■発行年月:
2018年12月 - ■会員価格:
3,240円 - ※詳細はJEITAホームページにてご確認ください。