製品安全分野における認証制度の
国際整合化・適正化に向けた
取り組み
近年、新興諸国・地域において、製品安全・EMC規制導入の動きが顕著に拡大しており、国際的なプラクティスに則っていない独自の認証スキームの早期強制化が、当該国市場へ製品を導入するうえでの支障となっています。国際基準に則り安全設計を行っていても、不合理な制度に対応するため高い認証コストを負担、これに伴い製品価格が上昇、認証取得時間の長期化により市場導入が遅れる等、様々な課題に直面しています。
適合性評価システム委員会・海外制度検討WGでは、こうした課題を改善するため、国際基準・スキームに整合した合理的かつ適正な基準適合性評価制度の在り方を検討し、当WGで策定したポジションペーパーをベースとして関心国に向けた提案型活動を積極的に展開しています。
製品安全分野における
認証の義務づけ
この地球上には言語、慣習、地理的要因等の異なる様々な国家が存在します。
製造者や消費者の安全確保に関する知識が十分に浸透していない国にあっては、国民の生命や財産を危険にさらすことのないよう、消費者保護の観点から法令の拘束力で危険な製品から国民を保護する必要があります。
そのために、特に製品安全の分野では、所定の安全基準に基づき、事業者自らが「規格に適合していることを宣言」することを法令で義務付けることにより、国が指定する基準をクリアした製品だけが市場に流通するシステムを作り上げています。
認証制度の実態
製品開発から製造出荷、市場販売に至る各ステージでクリアすべき多くの関門が存在する中で、製品の公的技術基準への適合を検証するステージは、製品のタイムリーな市場アクセスを左右する、重要な関門となっています。
特に、製品認証が法令で強制されている場合は、第三者機関、しかも規制当局指定の試験・認証機関にことを委ねざるを得ないことから、製品の市場アクセスのタイミングは適合証明書発行のタイミングに大きく依存することを想定しなければなりません。
広範囲な国・地域における基準適合性評価制度の開始・強化の動きに伴い、制度の国際化を推進する必要性が一層、高まっている中、適合性評価システム委員会・海外制度検討WGでは、2018年も、インド、サウジアラビア、GCC諸国(中東7カ国[サウジアラビア、クウェート、バーレーン、UAE、カタール、オマーン、イエメン])、UAE、メキシコ、マレーシアでの新規制に対する意見や要望書を提出しています。更に、下表に示す、UAEおよびインドに対しては、現地に赴き、関係当局への意見具申、直接面談での改善提案を実施しました。
インド 電子・情報通信製品
登録義務規則(CRO)
インドでは、電子機器およびIT機器の製品安全に関する新たな強制認証制度として、2012年9月付の官報にて、電子・情報通信製品登録義務規則(CRO)が発行され、2014年1月3日から完全施行されました。
概 要
当初、本規則は発行日から半年後の2013年4月3日に施行予定でしたが、指定試験機関数の不足等の諸事情により、2013年3月22日付けでNotificationが発行され、2013年7月3日まで延期されました。その後も、試験および機器登録手続き審査の長期化が十分に改善されず、産業界からの要請等を受け、2014年1月2日まで条件付きでの完全適合猶予が与えられ、2014年1月3日をもって完全施行となっています。
尚、当時、JEITAからも経済産業省および在インド日本大使館の支援のもと、現地関係当局に改善要望および延期等の提案を行いました。
適用規格
適用規格は、本規則の附表に対象品目毎指定されており、BIS Act下で、BISが出版するインド規格(Indian Standard、以下IS規格と記す)が引用されています。AV機器、IT機器のIS規格共にIEC規格に基づき策定されています。ただし、IS規格改訂時において新旧両規格が併存可能な期間は明確に規定されておらず、また、上位法令のBIS rulesでは、適用IS規格失効時には、即座にその適用規格に基づき発行された登録証が無効になると規定されています。したがって、適用規格の改訂動向は十分に注視する必要があります。
要求事項
- ①適用IS規格への技術適合
- ②BIS指定試験機関での試験の実施、試験レポートの入手およびBISへの機器登録の実施
- ③製品上および梱包箱上への適合マーク等の表示加えて、インド国外製造者(工場)の場合は、インド在中の代理人の設置が義務付けられています。
【CRO対象品目リスト】
インドCRO制度への
JEITAの取り組み
2012年9月の公示以来、適合性評価システム委員会より、対象品目の追加や規格更新に対する猶予期間の設定、過度な表示要求や煩雑な申請書類の是正などを申し入れ、徐々にではあるが一定の改善が見られてきています。
その一方で、新たに規制対象となる機器(Phase Ⅲ等)の強制日延期の公示や、規格の変更(IS 616等)による再登録強制日延期の公示など、強制日の直前になってそれらが公示されるという国際的な運用とは異なる対応が引き続きなされており、対象製品の物流停止など、ビジネスへ大きなインパクトを与えています。また、2018年6月には、追加の表示要求を含むBIS (Conformity Assessment) Regulations, 2018が発行、即日強制化されました。このような独自の適合性評価手続きや要求が当業界において大きな負担となっている状況を踏まえ、国際慣行に整合した運用への是正を求める改善提案を当局MeitYおよびBISに要望しました。しかし、当局から回答が得られなかったため、在インド日本大使館はじめ日系現地法人と連携を図り、同年7月26日に、関係当局(MeitYおよびBIS)との面談が実現しました。
面談では当初、Regulationの強制日の延期は原則的に考えていないとの基本方針の立場でしたが、粘り強い交渉の結果、最終的にJEITAの提案内容に理解が得られ、追加の表示要求に対し、2019年3月までの延期が実現しました。
認証制度の国際標準化・
適正化に向けて
適合性評価システム委員会は、2001年に設置され、発足以来、国際基準・スキームに整合した合理的かつ適正な基準適合性評価制度の在り方を検討し、関心国に向けた提案活動を推進してきました。
国内外問わず、今後も必要に応じて現地関係当局との直接交渉を含む積極的な取り組みを行い、規制制度の改善を通じて会員各社に寄与してまいります。