JEITAの活動
PICKUP

平成30年5月度 関西支部運営部会講演

支部運営部会では、5月9日(水)に、多摩大学 情報社会学研究所 教授・(公財)ハイパーネットワーク社会研究所 研究員の会津 泉 氏をお招きし、「ネクストモビリティを加速する~<小さい交通>は世界を変えるか?」と題する講演をいただきました。

会津教授は80年代にパソコン通信、90年代にはインターネットの普及を推進する等、利用者中心のネット社会発展に向けて早くから活動された方です。総務省「インターネットの高度利用化に関する研究会」をはじめ、多くの公職も務められました。2012年よりデジタル工作機器を活用する「ソーシャル・ファブ」の研究・実践に取り組み、現在は、「ネクストモビリティ」の推進に注力されています。

最初に、<小さい交通>を必要とする社会の状況について説明がありました。

「わが国の交通システム・産業における関心は新幹線、高速道路、航空網といった<大きな交通>に集まり、たとえば自転車や車椅子等は、そもそも移動の手段として認知されること自体が稀です。しかし、急速に進む人口減少と高齢化は、特に地方で従来の交通手段に深刻な影響を与え、歩行者以上・自動車未満の<小さな交通>が重要になることは、容易に想像できる所です。他方で、クルマ、ネット、モバイルの各企業が、将来のクルマ産業における覇権をめざしてしのぎを削る現状もよく知られています。」

続いて、「FabLab」(3Dプリンタをはじめ多様なデジタル工作機械を備えたオープンな市民工房の世界的ネットワーク)や、欧米、アジア、特に中国・深センにおけるオープンイノベーションの最新状況を紹介いただいた後、自動車関連の動向について報告がありました。 

「クルマづくりの世界では、例えば英国の OSVehicle社(現在はOpen Motorsに社名変更)は、自動車をDIYするための設計図や3Dデータをオープンソース(ソースコードが公開され、改造・再配布が自由なソフトウェア・ライセンス)で提供しています。また、ルノーは2017年のCESで、OSVehicle、ARMと提携の下、EVを自作するためのプラットフォームであるPOM(Platform Open Mind)を発表しました。今年5月には、モジュールを組み合わせることでカスタマイズやアップグレードが可能な自動運転車EDITも、OSVehicle から発表されています。オープンイノベーションの進展や、クルマづくりにおけるこうした急激な変化は、<小さい交通>の推進に大きな追い風となります。」

法制度をはじめ、その普及には多くの課題が山積することも間違いありませんが、地域をベースにユーザーからのボトムアップで社会を動かすべく、各地で多様な活動が展開されており、講師もその多くに関わっていらっしゃいます。一昨年は軽井沢、昨年は富山県黒部で、<小さい交通>実現に向けた取り組みを一堂に集めて「ネクストモビリティ・バザール」が開催されました。今年10月4~5日には「Next Mobility Expo 2018」が京阪奈学研都市で開催される予定で、現在、精力的にその準備が進められています。最後には、CESにおける日本のプレゼンス低下等の課題も提起され、映像を多用した大変刺激的な講演で、終了後の懇親会でも、最後まで参加者と熱心な会話が交わされました。