第92回 機器・部品メーカー懇談会
関西支部・部品運営委員会では6月13日(水)に大阪・太閤園にて標記の懇談会を開催しました。
部品運営委員長挨拶
会場の様子
最初に古橋健士 委員長(ホシデン(株)社長)より挨拶がありました。「当懇談会は、50年近くにわたり継続してきた、JEITA関西支部としても非常に重要なイベントです。長らく電機メーカーにご講演をいただいて来たが、ここ数年では自動車やロボットのお会社に講演をお願いすることが増え、最近は、かつて考えもしなかったような幅広い業界の皆様をお招きするようになっています。今回、JEITA会員であるシスメックス様、パナソニック様以外に、ヤマト運輸様、川崎重工様をお招き出来た事は大変ありがたく、皆様のご講演を楽しみにしているので、よろしくお願い致します。」
パナソニック(株)
イノベーション推進室 梶本一夫 理事よりご講演いただきました。
「エレクトロニクス業界は“電化”、“デジタル化”、“インターネット”の時代を経て、今“第2のデジタル化=IoT+AI時代”にあります。これは顧客にとっての価値源泉が“ハードウェアからコト”に変わったことを意味します。IoT時代の暮らしは、機械が人の想いを忖度し、先回りして対応してくれる世界と言えます。
当社では、旅客機内エンターテイメントシステムや基板作成分野などでのスマート工場、また、ホーム/店舗/自動運転/物流など多様な領域でのIoT/ロボティクスの展開に拠る顧客価値提供に取り組んでいます。そのために、東京・大阪・福岡のAI R&D拠点を軸に取り組みを強化している所です。
IoT+AI時代は、現実と仮想の2つの世界で情報を伝達するSensing、Actuation、Haptics(触覚)の技術が重要となります。この領域に強みを持つ日本の電子部品産業との協働に大きく期待しています。」
川崎重工業(株)
ロボットビジネスセンター 真田知典 営業企画部長よりご講演いただきました。
「日本の重工業の多くは、軍需産業に源を持ち、当社のロボット技術も、かつての高射砲製造技術に繋がります。1968年に米国メーカーと技術提携して事業をスタートし、今年で50年、世界最古のロボットメーカーです。日本のロボット産業は1兆円産業、世界生産の55%を占めており、当社でも1000億円をめざしている所です。
労働人口の減少は、わが国産業界における深刻な課題です。当社では、設置工事なしで必要に応じて簡単に現場導入できる協働ロボット“duAro”の派遣事業や、熟練工の作業をロボットが記憶し、複雑なプログラミングなしに高度な加工を行えるシステム“Successor”に注力しています。医療分野では、シスメックス(株)と合弁でメディカロイド(株)を設立し、日本製手術支援ロボットの開発に取り組んでいます。
社会課題の解決に向け、ロボットの利活用を促進するインテグレーターやサポートの体制を産業として育成することが重要と考えています。
シスメックス(株)
技術戦略本部 佐藤利幸 R&D戦略部長よりご講演いただきました。
「当社は拡声器メーカーTOA(株)から1968年に分離設立し、新規事業開拓をめざして米国の社会・産業に学び、血球計数に着目して技術を確立しました。現在は検体検査の機器・試薬を190ヶ国に輸出展開し、高いシェアを確保しています。生産は100%国内ですが、売上の84%は海外で、日本品質によりグローバルな信頼を勝ち得ている所です。
血液中に漏れ出た疾患由来成分を分析・検出するフローサイトメーター(FCM)を進化させたMI(分子イメージング)-FCMは、1億分の数個という血液中の異常細胞・がん細胞を撮像・カウントできます。また、遺伝子測定技術を構築し、疾患関連遺伝子を解析することで、個々の患者に最適なガン等の治療薬を抽出する、画期的なゲノム医療技術開発に取り組んでいます。
当社製品は全世界の医療現場に浸透し、電子回路、流体制御、光学、機構、無線等、多様な部品を長期にわたり使用します。この特性も理解いただきながら、オープンイノベーションで新たな技術・ビジネスを拓くSOLA=Sysmex Open Innovation Lab.においてご協力いただければと思います。」
ヤマト運輸(株)
小菅泰治 常務執行役員よりご講演いただきました。
「当社は来年、創業100周年を迎えます。物流業界は労働力不足、過疎化・都市化の進展等に大きな影響を受けていますが、働き方改革、ICT化により戦略的に対処しています。
配送のお求めは午前と夜の遅い時間に集中します。そのため、新たな専門配送体制“複合型ラストワンマイルネットワーキング”の拡充や、企業の調達と配達の物流を一気通貫する“サプライチェーンの価値創出”に取り組んでいます。企業顧客94万社(日本全体の法人格企業の1/4)、個人顧客2200万名の登録データをベースにICTを駆使し、LINEや宅配便ロッカー等の活用により、受け取りたい時間・場所で荷物を受け取る付加価値を実現しています。物流以外にも、送り状発行や請求業務、営業ツールのストック等、事業者支援のビジネスも展開しています。
羽田クロノゲートをはじめ大規模ハブ拠点と、その間の輸送を行う大型連結トレーラーにより、物流コストの圧縮を図り、ハブ拠点では、医療機器の洗浄・メンテナンス請負など24時間365日稼働を活かした新ビジネスも展開しています。
世界で勝ち抜くためには、技術力を持つ日本のベンダー/メーカーによる物流を含めた連携・協力が重要です。ヤマトグループは“付加価値を生み出す手段としての物流”を担うことで貢献したいと考えています。」
京セラ(株)
最後に、部品側を代表して、京セラ(株)の伊達洋司 取締役 執行役員専務より報告がありました。
「当社の電子部品事業は、情報通信・自動車・FAの3市場にフォーカスし、グループの総合力を活かして、小型・高機能な最先端電子部品の創出・供給に努めています。情報通信向けには、水晶ウェハの高精度加工技術を用い、スマートフォン用の世界最小水晶振動子を開発。自動車向けには、ADASモジュールに搭載する積層セラミックコンデンサー(MLCC)において、温度サイクルに対する高い実装信頼性を実現。また、FA向けには、今後期待される協働ロボットのトルク制御に資する水晶関連部品、MLCCの小型化や、増加するインバータ搭載機器での対応温度域の拡大に取り組んでいます。」
CPS/IoTで技術革新が期待される物流、医療、ロボット業界の動向に加え、エレクトロニクス業界としてのIoT取り組みをご紹介いただき、電子部品事業に期待する貴重なご意見を伺うことができました。懇親会を含め、お招きした4社、過去のご講演会社とJEITA各社の活発で有意義な情報交流の場となりました。