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IEC TC62(医用電気機器)ロンドン
会議報告

英国/ロンドンでのIEC TC62プレナリー会議(総会)の様子
英国/ロンドンでのIEC TC62プレナリー会議
(総会)の様子

2018年4月16日(月)~20日(金)に英国/ロンドンにて、IEC TC62(医用電気機器)及びSC62A,B,C,Dのプレナリー会議(総会)が開催されました。各会議には20ヶ国超の国々からのエキスパートが参加し、それぞれ活発な討議が行われました。

以下では、IEC TC62及びその国内対応組織の概要、JEITAが担当する傘下SCの活動紹介及び今回のロンドン会議における主な議決事項等について報告します。

1.IEC TC62及び国内対応組織の概要

IEC TC62は1968年に設立され、その後50年にわたり、医療に使用される電気機器(医用電気機器)に関わる国際標準規格の開発及びメインテナンスを行っています。医療機器の国際規格は、直接又は各国の国家規格等に落とし込まれ、機器の基本性能及び基礎安全を担保するための国際的な技術基準として、多くの国々の規制システムにおいて利用されております。TC62の議長は、米国(Michael Appel氏)、幹事(セクレタリ)はドイツ(Norbert Bischof氏)が担当しています。このTC(Technical Committee)には、その傘下に具体的な規格審議を進めるための4つのSC(Sub Committee)が設置されています。

(1)SC62A:医用電気機器の共通事項

(2)SC62B:医用画像装置

(3)SC62C:放射線治療装置、核医学及び
放射線量計

(4)SC62D:医用電子機器

JEITAはこのうちのTC62、SC62A、SC62Dの審議団体であり、それぞれの国内委員会を設置し、業界意見の反映に務めております。各国内委員会の委員長は下記の通りです。

TC62国内委員会
佐久 間 一郎 教授
(東京大学大学院工学系研究科)
SC62A国内委員会
正宗 賢 教授
(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
SC62D国内委員会
鈴木 真 教授
(東京電機大学 情報環境学部)

なお、SC62B及びSC62Cについては、日本画像医療システム工業会(JIRA)が審議団体を担当しています

2.各SCの活動

SC62A

SC62Aは、傘下に24のWG、MT、JWGを有しており、医用電気機器の安全性に関わる最上位規格として位置づけられるIEC 60601-1(通則)、並びにその下位規格であり共通課題別のIEC 60601-1-X(副通則)シリーズを中心に、環境保護、リスクマネジメント、ユーザビリティ、ソフトウェアといったテーマを扱う医療機器規格を審議対象としております。

現在、IEC 60601-1 第3.1版(第3.0版+Amend1の合本版)に対する修正追加箇所をまとめた追補2(Amend2)の審議が主要案件として進められており(2019年末発行予定)、さらにIEC 60601シリーズ規格の体系そのものの見直しを前提とした第4版(2024年発行予定)に関する議論も開始されました。

これに伴い、副通則であるIEC 60601-1-X(EMC、アラーム、在宅機器、救命医療機器の安全性他)についても、通則の改正(追補2)内容に即した追補をそれぞれ作成する必要があるため、通則と連動した検討が求められています。

また、2014年11月の薬事法改正(現薬機法)により国内的にも医療機器規制の対象となった医用機器ソフトウェアについては、サイバーセキュリティ等の差し迫った課題もあり、ISO TC210(医療用具の品質管理と関連する一般事項)及びISO TC215(保健医療情報)と協働しながら標準化の議論が進められています。

SC62D

SC62D は、傘下に31のWG、MT、JWGを有しており、各種医療機器の個別規格となるIEC 60601-2-Xシリーズを審議対象としています(SC62B担当の画像診断装置及びSC62C担当の放射線・核医学関連機器を除く)。各個別規格は、常に上位規格である通則、副通則と合わせて運用されることになりますので、前述の副通則同様、通則の改訂に合わせた速やかな見直し作業を都度行っています。また、新規の規格案の開発も活発に行われています。

SC62Dでは非常に多くの個別製品を扱いますが、JEITAの参加企業が係る検討対象機器だけでも、内視鏡、電気メス、非観血血圧計、体温計、除細動器、パルスオキシメータ、心電図モニタ、多機能モニタ、脳波計、ホルタ心電計、超音波診断/治療機器、手術及びリハビリ用ロボット等が対象製品として挙げられます。

このうち、手術及びリハビリ用ロボット(SC62D/JWG35及び36)については、2015年より日本ロボット工業会及び産業技術研究所との協働で、日本国の意見を取り纏め、国際会議での意見反映に務めてきましたが、2018年末にそれぞれ、IEC 60601-2-77(手術用)及びIEC 60601-2-78(リハビリ用)として発行が予定されています。

また、もう一つのトピックスとして、2014年より日本発の提案(経済産業省の戦略的国際標準化加速事業)として開発が進められておりました低侵襲プラズマ止血機器安全規格IEC 60601-2-75が、2018年5月に正式発行されました。

3.今回のロンドン会議での
主な決議事項

JEITAの担当するTC62(SC62A並びにSC62D含む)における主な決議事項は次の通りです。

①IEC 60601-1第4版への改訂に向け、6月21〜22日にロンドンにて、Ad-hocグループ会議を開催し、新たなアーキテクチャの検討を実施することになった。当該Ad-hocグループには、当初TC62及び傘下SCの議長国及び幹事国以外の参加は想定されていなかったが、現地でのロビー活動の結果、希望する国の代表者がグループ会議の中でそれぞれの見解を述べる機会を得ることができた。

②医療機器分野のソフトフェア及びネットワークにおける幅広い課題を解決するために設置されたTC62/SNAG(Software and Network Advisory Group)の活動再開についての議論があった。今後再開する場合は、引き続き日本からも参加できるようにその場で申し入れ、了承された。

③副通則の改訂において、IEC 60601-1-9(境配慮設計)、IEC 60601-1-12(救命救急医療機器)の2つは技術的な改訂はないが、引用規格の日付更新のための改訂を行う。

④通則の改訂において、引用しているIEC 60950-1(情報通信機器の安全)を、どのタイミングで後継規格であるIEC 62368-1(AV・情報通信機器のハザードベースによる安全)に置き換えることにするかについて国際投票を行う(前述の追補2又は第4版のいずれとするかの選択)。

⑤SC62A/WG20(環境保護)で開発中のIEC 63120(リファビッシュ製品の安全)のスコープが、SC62Bで先行して開発中のPAS(公開仕様書)のそれとコンフリクトを起こしているとの指摘がある。両コンベナは協力してコンフリクトを解消する。また、環境、リファビッシュ、再利用は、医用電気機器に限らず医療機器全般の共通課題であるから、これらの調査のためのISO TC210と合同でAd-hocグループと設置する。

4.今後の対応

前述の通り、安全通則IEC 60601-1及び副通則IEC 60601-1-Xシリーズの改訂は、当然、それらを引用する各個別製品の安全規格IEC 60601-2-Xシリーズにも影響し、結果的に60601シリーズ全体にわたる改訂作業が連動して進められることになります。医療機器業界は、各国の規制に利用されるこれら規格の動向について常に注視しておく必要があります。特に、今後最も注目されるのが、2024年の発行を目指し、このほど議論が開始されたIEC 60601-1 第4版の開発です。この第4版では、各国の規制システムにも影響を及ぼす60601シリーズの規格体系そのもののドラスティックな改訂が予定されており、これまで以上に関係各国による活発な議論が展開されるものとみています。

JEITAとしては、今回の大改訂を好機ととらえ、歴史的な背景もありこれまで欧米中心に進められてきた当該シリーズの根幹を議論する場にも積極的に関係者を派遣し、日本の医療機業界の意見反映は元より、行政機関とも連携しながら国家としてのプレゼンスの向上に努めて参りたいと考えております。

5.次回のTC62総会開催予定

2019年10月 中国/上海

【IEC TC62ロンドン会議スケジュール
(SC62B及び62C関係会議を除く)】

【IEC TC62ロンドン会議スケジュール(SC62B及び62C関係会議を除く)】