年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
2012年の世界経済は、欧州債務危機や新興国経済減速などの影響を受け、不安定で力強さに欠けるものとなりました。復興関連需要の下支えで回復傾向にあった日本経済も影響は避けられず、円高や電力供給問題をはじめとする企業努力を超えた「六重苦」の状態の中で、海外企業と熾烈な国際競争を行わなければならない厳しい一年であったと思います。
しかしながら、当協会が昨年12月に発表した2013年の電子情報産業の世界生産は、222兆円、前年比5%増と2年連続で前年を上回る見込みです。そして日系企業の世界生産も、2012年の37兆円、前年比5%減から、2013年には38兆円、前年比2%増と回復を見込んでいます。
また、昨年10月の国際通貨基金の見通しでは、2013年の世界経済の実質経済成長率は3.6%増と、2012年の3.3%増を上回ると見ています。特に新興国においては、欧州債務危機などの影響による下振れの懸念はあるものの、2012年の5.3%増を上回る5.6%の成長を見込んでおり、今後も相対的に高い成長が継続すると思われます。
IT・エレクトロニクス業界を取り巻く事業環境は日々変化していますが、それと同じように、人々や社会の要求も大きく変化しています。
このような中、我々が持つイノベーションの力は様々な領域で活用の可能性が広がっています。モノづくりで培った技術を他産業に活用することで、新たな生活スタイルや社会システムを構築し、新しい産業、新しい市場を創造していくことが必要です。イノベーションを生み出す領域を広げることで、人々の生活を更に豊かにし、新しい驚きや感動を与えることができると考えています。
IT・エレクトロニクス産業は自動車、エネルギー、医療・ヘルスケア、農業、住宅など他産業との融合によってイノベーションを生み出し、利便性や効率の高い社会を実現し、今後の日本経済の再生・成長に貢献していきます。
中でも日本企業がこれまで培ってきた、省・創・蓄エネといった環境技術や効率的なエネルギー管理は、わが国のみならず世界のあらゆる国々で、中長期的な電力需給問題や環境問題の解決の鍵になると思います。それぞれの国や地域のニーズを的確に把握し、求められる商品やサービスの機会を逃すことなく提供していくことが極めて重要だと言えます。
顕在化する社会的課題や問題を解決し、人々のライフスタイルや社会を大きく変える新たな付加価値を創造することが新産業や新市場の創出につながり、ひいては新たな産業構造の転換につながっていくと考えています。
そして、国内で生み出したイノベーションを新興国をはじめとした世界に展開し、海外の経済成長をわが国に取り込むことが重要であります。そのためには、国際的に公平な競争条件を確保した国内での事業環境の整備が必要です。
当協会はかねてより、円高の是正、低廉で安定的な電力供給の必要性、イノベーションの継続を可能にする研究開発税制の拡充や法人実効税率の引き下げ、WTO 情報技術協定(ITA)の拡大、環太平洋経済連携協定(TPP) や日EU経済統合協定(EIA)の推進など、あらゆる機会を捉えて政策提言や規制・制度改革などを訴え続けてきました。業界一丸となって、引き続き世界水準の事業環境の整備に取り組んでいく所存です。
IT・エレクトロニクス業界が困難を乗り越え、一致団結して日本経済の再生に向け新たな一歩を踏み出すため、また当協会に寄せられる期待と責務に応えるため、会員の皆さまと共に本年も着実に事業を推進してまいります。
現下の逆境を克服し、2013年が新たな挑戦の年、そして飛躍の年となることを祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。
以上