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矢野会長 退任挨拶

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会
会長 矢野 薫

会長 矢野 薫

 昨年を振り返りますと、東日本大震災の影響は、電力供給の制約や工場・事業所等の被災によるサプライチェーンの混乱など、非常に広い範囲に及びました。さらに欧州債務危機や歴史的な円高、加えてタイの洪水被害の拡大に伴い、再び世界的なサプライチェーンの混乱が引き起こされるなど、IT・エレクトロニクス業界にとっては激動の1年となりました。当業界を取り巻く事業環境は「六重苦」とも言われ、立地環境の劣化による国内産業の急速な空洞化が懸念されております。
 JEITAでは皆様にご協力いただきながら、「国内立地の推進」、「為替の適正化」、「安定かつ低廉な電力の確保」、「法人税引き下げと研究開発税制の充実」、「EPA/FTAの推進」、「規制改革」などを、あらゆる機会を捉えて政府へ要望してまいりました。その結果、平成23年度当初予算や補正予算においては、中核部品・素材や重要技術・産業に対し国内立地へのご支援をいただき、また、平成24年度税制改正においては、JEITAが要望しておりました法人実効税率の引き下げ、研究開発促進税制の拡充・延長などが一部盛り込まれました。今後のさらなる拡充に向け、引き続きご支援のほどお願い申し上げます。
 また、当業界にとって、国際的にイコールフッティングな競争環境の整備は、最重要課題の一つと考えております。JEITA会長として、欧州委員会および議会関係者と懇談し、1月には訪欧して関係機関のキーパーソンに直接会って日EU経済統合協定(EIA)への強い期待を表明するとともに、早期交渉開始を要望いたしました。グローバル化の動きがますます加速し、韓国や中国などの国々では、国策として産業競争力の強化に取り組んでおります。昨年11月に、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加が表明されたことは大きな前進であり、これが契機となって、日EUEIA、日中韓FTAなどにおいても貿易投資自由化に向けたルール作りが進むことを強く期待しております。
 一方、エネルギーや環境分野などで、IT・エレクトロニクス技術と従来の産業を融合させた新産業創出に向けた動きが活発になっております。当業界は、最先端技術で世界をリードする高い付加価値を持った製品やシステム、サービスなどを創り出すことのみならず、社会インフラ、農業、医療・ヘルスケアなど他分野の産業との融合により、安心・安全で豊かな暮らしを実現することで、世界に貢献できると考えております。それにより、アジアをはじめとした海外の成長に貢献し、日本に利益を還流させることで、日本の復興と持続的な経済成長に貢献していくことが重要であると思います。
 現在直面しているこの難局を打ち破るためには、新しい市場の創出、ならびに日本の強みを活かした産業競争力の強化が不可欠であり、国家戦略を共有しながら、政府と業界が一体となって、戦略的かつ継続的に取り組んでいく必要があると考えております。中鉢新会長の下、一致団結して日本の力強い復興と国際競争力強化に向け、当業界が直面する課題への対応を図っていただきますよう、切にお願い申し上げます。
 最後に、皆様に頂戴しましたご支援・ご協力にあらためて感謝申し上げ、簡単ではございますが、私の退任のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。