【私的録音録画小委員会及び補償金制度全般】
(1)補償金制度とは、本来、私的複製が際限なく行われることで権利者に重大な経済的損失が生じる場合に、それを補償しようとするものである。 (2)デジタル技術の進展に伴い、技術的にコンテンツの利用をコントロールすることが容易になっていく中で、補償金制度の必要性は反比例的に減少する。 (3)従って、JEITAとしては、消費者の意見を十分に踏まえ、デジタル技術の進展に伴って補償金制度を縮小・廃止していくことが原則と考える。 (4) 5月8日の小委員会では文化庁から、今後の補償金の縮小・廃止の方向性は示されたものの、その道筋が見えないばかりでなく、当面は、むしろ補償金の対象を制度的に拡大していくことが示された。 (5)新たに補償金の対象に追加するとされている機器は、権利者の経済的損失を直接生じせしめるものではない、いわゆるタイムシフト・プレイスシフトを目的とするもの(HDDレコーダー、携帯オーディオプレーヤー)。 JEITAとしては、こうした機器を補償金の対象とすることは補償金制度の趣旨に照らし合理性はなく、従って、消費者に不合理な負担を強いるものであるため、受け入れられない。 【ダビング10について】 (6)ダビング10は、総務省のデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会において、権利者、放送事業者等の関係団体が合意したもの。これは、消費者がよりコンテンツを楽しむことができるようにする方策であり、JEITAとしても、決定どおりに実施すべきものと考える。(7)このため、運用開始日を早期に確定するよう、Dpa等の関係者にもこれまでも強く働きかけてきた。 (8)しかしながら、ダビング10の問題を補償金の問題と一体化した議論が一部で行われ、ダビング10の予定通りの実施に向けた作業が進んでいないことは残念である。 (9)ダビング10は、技術的に複製回数を制限するものであるから、上記の原則に照らせば、一般論として補償金の対象とすべきではない。 JEITAとしては、ダビング10に対応する機器を補償金の対象とすることには反対であり、とりわけ一体型ハードディスク内蔵型録画機器を対象とすること、デジタル放送に着目して課金することは容認できない。 (10)JEITAとしては、消費者のダビング10実施への期待・消費者の負担に最大の注意を払いつつ、議論に主体的に参画してまいりたい。 以 上
(参考) JEITAの見解に係る経緯等について - わが国では著作権法の第30条により、個人が家庭内などで著作物を楽しむ場合は「私的複製」をしても良いとされていますが、デジタル機器の発達で、音質(画質)の低下なくコピーができるようになってきたことから、平成4年より著作権者への補償のために、デジタル機器・媒体に補償金をかけ、消費者にご負担いただくようになっております。
- さて、さらに技術が進み、著作権保護技術によりコピーなどの制限ができるようになってきている現在、この補償金制度の抜本的改革が必要ではないかとの観点から、文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会で検討が進められてきております
- JEITAとしましては、法律の趣旨に照らしても、「著作権保護技術でコピーがコントロールされているものや、タイムシフト・プレイスシフトなどのコピーであって権利者への重大な経済的損失が発生していないものについては、補償は必要ない。」との立場でこの検討に臨んでまいりました。
- 昨年の12月の段階で、文化庁も私的録音録画制度は著作権保護技術の発達・普及を前提として、縮小・廃止の方向性を打ち出しましたが、この1月に、なお、無料デジタル放送の録画と音楽CDからの録音については、当面、補償金での対応を検討する必要があるものとの整理を行いました。
- JEITAとしましては、無料デジタル放送の録画(ダビング10)については、著作権保護技術によりコピーが一定回数にコントロールされていること、さらにはいわゆるタイムシフト(後で見るための録画)であって、権利者に大きな経済的損失を与えていないと考えられること、また音楽CDからの録音については、例えばレンタルCDからの録音とすれば、レコード会社、レンタル業者、レンタルユーザーの間の契約などで権利者の対価は直接回収できること、さらにはCDの携帯オーディオプレーヤーへの録音はいわゆるプレイスシフト(別なところで聞くための録音)であって、これも権利者に大きな経済的損失を与えていないと考えられることから、補償の対象とする必要はないとの意見を小委員会の場で述べてきました。また、ネット配信で有料で音楽を購入しているユーザーにとっては、その料金と補償金とで二重に権利者への対価を払うことにもなってしまいます。
- JEITAとしましては、4月3日に再開された今年度の小委員会においても、さらに真摯に議論を続けようと考え、5月8日の小委員会では文化庁案に対して詳細な意見を述べるとともに、さらに文書でのご説明を求めたところです。これらやり取りについては、別途文化庁からご説明があると理解しておりますが、JEITAとしての考え方は上述の「見解」に示すとおりであり、今後とも、小委員会において真摯な議論を行ってまいります。
- 一方、総務省情報通信審議会デジタル・コンテンツの流通の促進に関する検討委員会において、放送事業者及び権利者の代表も参加し、昨年8月、デジタル放送録画時の著作権保護技術として、現在のコピーワンスに代わるダビング10の導入が決定されました。JEITA傘下のメーカーもデジタル放送推進の観点から、この制度に対応しようと、粛々とダビング10対応のDVD/BDレコーダー等の開発を進めてまいりました。
- もともとの予定ではこの6月に、ダビング10が運用開始となるところですが、ダビング10の実施に伴う録画補償金の要否について関係者間の合意に至っていないことに加え、権利者がダビング10とは関係ない録音補償金の拡充を併せて一体的措置を求めたことも一因となり、現時点においてダビング10の運用開始日が決定できない状況となっております。
- JEITAとしましては、2011年のデジタル放送への完全移行に向けての受信機の普及に障害となる可能性があること、また、デジタル放送の視聴者の皆様が北京オリンピックなどを控え、高画質での録画のために、利便性の高いダビング10対応の録画機が入手できるようになるまで、録画機の入手を手控え始めているのではないかという懸念を感じており、デジタル放送推進の関係機関などに、早期のダビング10の運用開始を引き続き強く働きかけてまいります。
- 我が国コンテンツの振興のために、権利者に適正な対価が支払われるべきことは当然ですが、デジタル化によって技術的にコンテンツの利用をコントロールすることが容易になっていく中で、消費者に対する補償金のご負担をどうすべきか総合的な議論が必要です。JEITAとしましては、消費者の方々のご意見や利便性に最大の注意を払いつつ、デジタル技術の進展、コンテンツ産業の育成など総合的な視点から、引き続き補償金の議論に主体的に参加してまいりますので、皆様方のご理解とご支援をお願い申し上げます。
以 上
私的録音録画補償金問題に係るJEITAの見解について |