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第17回JEITA会長賞受賞者

受賞者: スマートホーム部会/新サービス創造データ連携基盤検討会
テーマ : 「イエナカデータ連携基盤の社会実装に向けた取組み」

一般社団法人エコーネットコンソーシアムと連携し、マルチベンダーが生み出す宅内機器データの利活用を可能とする「イエナカデータ連携基盤」の構築に尽力した。同基盤は、スマートホーム関連事業者間の相互接続性を高めることを実現し、高齢者世帯へのケアマネージメントサービス等への実用的な展開が進められている。一連の取組は、持続可能な社会インフラサービスの実現に向けた活動として、広く一般社会に貢献するものと評価する。

JEITA会長賞受賞に寄せて
(スマートホーム部会/新サービス創造データ連携基盤検討会)

新サービス創造データ連携基盤検討会の座長を務めさせていただいております白石です。この度、このような素晴らしい賞をいただき、たいへん光栄に存じます。検討会を代表して心よりお礼を申し上げます。
これまで、我が国におけるスマートホームやイエナカデータデータ連携基盤の構築や普及活動を続けてこられたのも、ご参加いただいている会員企業の皆様やJEITA事務局の皆様、またご配慮いただきました関係者皆様のお蔭と、心から感謝し、御礼申し上げます。

スマートホームとは?

JEITAの「スマートホーム部会」では、IoT家電・住宅設備等により収集される消費者の生活データを活用し、魅力的なサービスを生み出す新たな市場である「スマートホーム」の実現を目指すため、2017年より、活動を行ってまいりました。
従来、「スマートホーム」は、住宅内に設置された家電製品や設備機器を簡単に操作・遠隔から制御できるようにするホームオートメーションの領域が中心でしたが、現在では、外部のサービス事業者や自治体と連携し、居住者の生活を支援するサービスへと進化しつつあります。近い将来には、消費者へ快適な生活を提供するだけに留まらず、人手不足が深刻化している不動産管理や介護領域など、事業者向けのサービスの導入も進んでいくなど、社会システムの一部として機能していくことが見込まれます。

イエ単位の情報集約・情報生成を可能にするイエナカデータ連携基盤

スマートホーム市場の形成にあたっては、人口減少によって新築住宅の需要が落ち込むことが予想されるなか、住宅建築事業者だけではなく、家電製品メーカー、住宅設備機器メーカー、あるいは住宅向けサービス事業者など、住宅に関わるさまざまなプレイヤーが協力しながら、「スマートホーム」サービスの需要をいかに創出していくか。そのために必要なデータ連携基盤をいかに整備していくかがカギを握ります。
しかしながら、IoT機能付きの家電製品や設備機器は、各メーカーで稼働データを収集してクラウドサーバーで管理しており、そのデータを囲い込んで他のライバル企業に提供しないことが、データ連携サービスの開発が進まない要因となっていました。また、家電製品を設置した家の情報もメーカーごとのIDでバラバラに管理され、共通IDが整備されていないため、家単位でデータを連携してサービスを提供することも困難でした。
このような状況を踏まえ、JEITAでは、スマートホームの標準通信規格を推進する団体である一般社団法人 エコーネットコンソーシアムと連携し、「イエナカデータ連携基盤」について検討を開始し、家を特定する「イエID」によって、家に設置された異なるメーカーのIoT機器データを連携できるようにするのとともに、マルチベンダーが生み出すデータを分析・高次化する機能を実現し、スマートホームに関連するステークホルダーに、消費者の生活データを活用しやすくするためのイエナカデータ連携基盤の開発を行いました。

図:イエナカデータ連携基盤のしくみと役割

スマートホームが生み出す住まい手の様々なパーソナルデータを扱うには、認証処理、認可処理、許諾管理などを、実装する必要があり、これには管理構造が難しい上に、個人からの許諾を適切に取得する必要があり、また、いつでも許諾状態を確認して、把握・管理できる丁寧なUI構築が必須であるため、実現に非常に手間が掛かることが課題となっていました。そのため、個人や家に関わる情報は、地域情報などに統計化して扱うことが多く、そのデータをもとに、個人や家へのサービスに活用するのは難しい状況でした。
イエナカデータ連携基盤では、こうした問題を解決した個人の認証基盤を実装し、パーソナルデータのプライバシーガイドラインを守って、取り扱うことができるUIを具体的に実現することを達成し、個人のプライバシーに配慮し、行政だけでなく、民間事業者や専門の協議会・団体、地域の大学など、あらゆるステークホルダーによる共創が実現される基盤となります。

イエナカデータ連携基盤の社会実装:

2024年4月には、石川県 能美市において、イエナカデータ連携基盤を活用した高齢者見守りサービスを開発しました。
同市のサービスは、見守りが必要な高齢者世帯に、人感センサーなどを装備したシャープ製の空気清浄機、または三菱電機製エアコンを設置しました。各家庭で得られたデータはインターネットを経由して、見守りサービスに必要なデータを、「イエナカデータ連携基盤」に送り、高齢者の状態を把握するための高次化処理を行うものです。その情報を石川県 能美市の汎用連携システム側で、イエIDと照合して高齢者の住居を特定し、市から高齢者世帯を担当するケアマネジャーまたは民生委員に通知して安否確認などのサポートを行う全国で初となる仕組みを達成しています。

今後は、イエナカ情報とパーソナル情報やベースレジストリ情報等を含めた多種多様(規模、時間軸の変化点)なデータを組み合わせ、行政や民間(地域産業)と連携し、見守りだけではなく、介護・防災といったサービスでの活用を進め、世代を超えた住民同士の「共助」など、持続可能な社会インフラとして機能させていきます。

主な活動実績

2022年8月
JEITA スマートホーム部会とエコーネットコンソーシアムとの共同組織として、「新サービス創造データ連携基盤検討会」を設立。
イエナカデータ連携基盤のあるべきアーキテクチャ設計・社会実装に向けた標準化設計の検討を開始。
2023年10月
石川県能美市、シャープ、三菱電機、AIoTクラウド等と複数メーカーのIoT家電を活用したマルチベンダー型「IoT高齢者見守りシステムサービス」構築事業を発表。当該事業に「イエナカデータ連携基盤」が採用。
2024年4月
石川県能美市において、各種センサーを使った地域のケアマネジャーや民生委員の活動を支援する高齢者見守りサービスが開始。
2025年2月12日
単身の高齢者等、日常的な見守りが必要で、IoT家電を通した見守りサービスの利用を希望する人に対し、IoT家電の購入費を助成する「能美市IoT見守りサービスに係るIoT家電購入助成事業」が開始。

今回受賞した会長賞は、スマートホーム部会/新サービス創造データ連携基盤検討会に参加頂いている各社の皆様やご支援頂いている企業の皆様と一緒に表彰されたものと考えております。今回の受賞を糧に、引き続き微力ながらも、スマートホームの市場構築に貢献していく所存でございます。

スマートホーム部会/新サービス創造データ連携基盤検討会:
住宅・住宅設備機器・家電・IT通信機器・サービス等の住まいに関わるあらゆるモノを連携したスマートホームの普及・啓発・市場拡大に向けた諸課題解決を図るために、業界・業種の枠を超えた 「スマートホーム部会」 を2017年に設置。2022年には、イエナカデータ提供を推進するための制度・ビジネスモデル等の検討やイエナカデータ連携基盤の要件等を整理するため、JEITAのスマートホーム部会とエコーネットの普及委員会との共同組織として新たに「新サービス創造データ連携基盤検討会」を設立。

スマートホーム部会 部会長:
丹 康雄  国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 副学長 教授

ホームーページ:

(スマートホーム部会)
https://home.jeita.or.jp/smarthome/index.html

(JEITAが目指すスマートホームとは)
https://home.jeita.or.jp/smarthome/deliverables/vision.html