第17回JEITA会長賞受賞者
- 受賞者: 半導体部会/半導体EMC性能等価性評価WG
- テーマ : 「半導体EMC性能の等価性評価法の標準化」
半導体製品におけるEMC(電磁両立性)性能の等価性を評価する手法を確立し、その規格策定を行った。これにより、PCN(製品変更通知)を受け取った電子機器製造会社において、従来実施していたEMC試験の時間と費用の大幅な削減が実現された。同WGの活動は、半導体供給の安定化および業界全体の生産性向上に寄与したものと評価する。
※EMC:電子機器が他の機器に対して電磁的な干渉を引き起こさず、かつ外部からの干渉を受けても正常に動作する能力
JEITA会長賞受賞に寄せて
(半導体部会/半導体EMC性能等価性評価WG)
この度、このような素晴らしい賞をいただき、たいへん光栄に存じます。5年間にわたり本活動を続けてこられたのも、ご支援いただきました参加企業およびJEITA事務局の皆様、またご配慮いただきました自動車技術会(JSAE)の関係部会をはじめ関係者皆様のおかげと、心から感謝し、御礼申し上げます。
半導体EMCサブコミッティ ご紹介
我々のWGは、半導体システムソリューション技術委員会/半導体EMCサブコミッティのもとで活動しています。この半導体EMCサブコミッティでは、半導体EMCに関するIEC国際標準化活動、システム(アプリケーション)上のEMCに関する規格の検証実験(妥当性、相関など)、および評価法の普及促進活動を行っています。このSCで審議している半導体EMC性能の評価方法(IEC規格)を活用し、半導体EMC性能等価性評価WGはJEITA規格を発行しました。
半導体EMC性能等価性評価WG ご紹介
半導体EMC性能等価性評価WGは、昨今、電子機器メーカー、半導体メーカーを悩ますPCN(Product Change Notification、製品変更通知)に関し、技術的根拠を有しながら、如何に経済的に対応するかを検討してきました。昨今の半導体業界では、合理化や採算性向上を目的とした生産工場の移転や工程・材料の変更が頻繁に発生しています。これらの条件が変更される場合、半導体会社から電子機器会社にPCNが発行され、電子機器会社では再度、電子機器の性能確認や信頼性確認を行わなければなりません。また、その確認のためには半導体会社への問い合わせも多く発生します。PCNへの対応は半導体会社、電子機器会社の双方に大きな負荷が発生します。特に大変な性能確認が、我々のサブコミッティ、WGで取り組んでいるEMC性能になります。この問題に対応するため、2019年に半導体EMCサブコミッティの傘下に半導体EMC性能等価性評価WGを設置しました。構成メンバーは半導体会社(ルネサスエレクトロニクス株式会社、東芝デバイス&ストレージ株式会社、ローム株式会社、パナソニックインダストリー株式会社、株式会社ソシオネクスト、日清紡マイクロデバイス株式会社)、機器製造会社(株式会社デンソー、株式会社デンソーテン)、評価関係会社(パナソニックホールディングス株式会社、株式会社ノイズ研究所)の方々が委員として参加しています(順不同)。
JEITA規格(半導体EMC性能等価性評価法)の作成
半導体のEMC評価法は半導体EMCサブコミッティで審議され、IEC規格の制定に貢献してきました。エミッション規格はIEC 61967:Integrated Circuit, Measurement of Electromagnetic Emissionsにて6種類(-2~-6、-8)の評価法と総則(-1)が標準化されており、イミュニティ評価方法は、IEC 62132:Integrated Circuit, Measurement of Electromagnetic ImmunityならびにIEC 62215:Integrated Circuits, Measurement of Impulse Immunityで標準化されています。これらのIEC規格を活用し、JEITA規格ED5008半導体EMC性能等価性評価法を制定しました。IEC会議で十分に審議されてきたIEC規格を引用することで信頼性を担保することができました。具体的にはIEC 61967-4 Integrated Circuits - Measurement of Electromagnetic Emissions - Part 4: Measurement of Conducted Emissions - 1 ohm/150 ohm Direct Coupling MethodおよびIEC 62132-4 Integrated Circuits - Measurement of Electromagnetic Immunity 150 kHz to 1 GHz - Part 4: Direct RF Power Injection Methodを参照しています。
「半導体EMC性能等価性評価法」の活用と効果
JEITA規格ED5008をPCN対応に活用するためには、このPCNに関わるステークホルダー間での合意形成が必要です。このため、本規格の活用効果が最も望まれる自動車業界のキーマンなどに参加していただいたオープンフォーラム(2019年)を開催し、規格の原案の説明とヒアリングを行った上でJEITA規格を発行しました。また、2020年にはJSAE(自動車技術会)の方々とこのJEITA規格を参照した自動車用半導体のEMC性能等価性試験法を自動車技術会規格D019として制定しました。この結果、半導体会社、電子機器会社、自動車会社の各社がJEITA規格と自動車技術会規格を運用することで、PCNに対応する環境を整えることができました。
これらの規格制定後、半導体工場の火災事故等が発生しました。図らずもこれらの規格を全面的に活用し、多くの半導体製品を速やかにPCN対応することができ、混乱を早期に収拾することができました。
「半導体EMC性能等価性評価法」の課題と今後の活動
現在、当WGでは、JEITA規格ED5008の適用範囲拡大を検討しています。その一部は2025年にED5008Aとして改訂しました。さらに自動車技術会の皆様と更なる改定の検討を進めています。このように半導体から自動車までのステークホルダーの方々と意見交換をしながら、今後もJEITA規格の制定/改定およびEMC評価方法の普及、促進してまいります。
今回受賞した会長賞は、当該ワーキングに参加いただいている各社の皆様やご支援いただいている企業の皆様と一緒に表彰されたものと考えております。今回の受賞を糧に、引き続き微力ながらも業界に貢献していく所存でございます。

略歴:半導体部会/半導体標準化専門委員会/半導体システムソリューション技術委員会/半導体EMCサブコミッティ
半導体EMC性能等価性評価WG
2019年、半導体部会/半導体標準化専門委員会/半導体システムソリューション技術委員会/半導体EMCサブコミッティに半導体EMC性能等価性評価WGを設置。半導体のPCNに関しEMC性能の等価性を確認する評価方法について検討。
ホームーページ:
(半導体システムソシューション技術委員会)
https://semiconjeitassc.jeita-sdtc.com/spt/
(半導体EMCサブコミッティ)
https://emc.jeita-sdtc.com/