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第15回JEITA会長賞受賞者

受賞者: 半導体部会/政策提言タスクフォース
テーマ: 「国際競争力強化を実現するための半導体戦略の提言に関する取組み」

政府・行政に対して日本の半導体産業界の声を提言する活動を積極的に行い、経済産業省の半導体・デジタル産業戦略において、提言内容が半導体国内生産拠点の確保や半導体サプライチェーン強靭化のための政策の後押しにつながった。同TFの提言活動は、我が国半導体産業の競争力維持・強化はもとより、カーボニュートラルの実現やサプライチェーンの安定化、人材育成に資する活動として、一般社会に大きく貢献した。

JEITA会長賞受賞に寄せて
(半導体部会/政策提言タスクフォース)

この度は、このような栄誉ある賞をいただき、たいへん光栄に存じます。これまでの提言を纏めるにあたり、東京理科大学大学院の若林秀樹教授にTF座長に就任いただき、ご知見を拝借させていただいたこととともに、オブザーバ各位にご助言をいただきましたことに、心から感謝申し上げます。

半導体産業は、世界市場では2022年60兆円規模、2030年には100兆円に拡大すると見込む中で、DX・GXをリードし、経済安全保障、地域活性化の要として、国家のコメ、社会のコメとして、その重要性の認識度は飛躍的に高まり、海外においては、各国・各地域政府による数兆円規模の大規模支援が進んでおります。

これまで日本の半導体企業は自助努力により、強い半導体分野(メモリ、パワー、センサ、マイコン、アナログ等)の競争力を維持してきましたが、世界的な半導体の大規模支援の潮流の中で、日本政府の支援がない場合は、日本の強い半導体分野もシェアを失うことになり、日本の半導体産業は益々窮地に追い込まれてしまいます。日本の半導体業界としては、国際競争力強化に向けた自助努力を積み重ねていきますが、日本政府による他国・地域と同等並みの補助金政策無しでは、他国・地域の競合他社と対等な競争は困難となり、あと10年程度で日本から半導体産業が消えてしまうのではないかという危機感を抱いておりました。この問題を解決するためには、日本においても官民一丸となった半導体戦略の構築が不可欠であり、産業界からの声を政府・行政に打ち込んでいくための仕組み作りが急務となり、長年業界活動を進めてきた半導体部会では「政策提言タスクフォース」を立ち上げ、日本の半導体戦略の効果的な行動指針を策定するために、政府・行政とやり取りする仕組み作りを開始しました。

このような世界的な潮流や、米中摩擦などにより、経済安全保障の認識が高まり、地政学リスクやコロナ禍による半導体サプライチェーンの複雑さや重要性が問われる中、日本政府は、半導体産業の多面的重要性を認識し、経済産業省による半導体戦略も打ち出されました。

こうした中で、日本のDXやGXを支える半導体を担う当事者として、半導体部会では、半導体・デジタル戦略で示された経済産業省の政策に呼応する形で、日本におけるデジタルインフラの構築・強化を求めるとともに、その基幹部品である日本の半導体産業の更なる競争力強化を達成するため、一昨年、昨年に続き、2023年も日本政府に対する具体的な提言を行いました。

2022年版の提言では、半導体人材育成の強化に向けた取組に対する提言を行いました。それと連動する形で、九州ブロックや東北ブロックなどの各地域における半導体人材育成を推進するコンソーシアム・協議会等に参画し、日本の半導体産業界代表として、積極的に発言し、取組みを進めているところです。

さらに、2023年版では、電気代や税制に関するシミュレーション結果を掲載し、イコールフッティングの重要性を説きました。半導体の製造拠点は24時間・365日稼働を続ける必要があり、最先端で膨大な数の設備を動かし続ける必要があるので、電力コストの負担が非常に大きいです。日本、米国、欧州、韓国、台湾の電気代を比較すると欧州、日本が高く、米国、韓国、台湾の電気代はその半分以下であるというシミュレーション結果となりました。また、2023年度の年間税額控除可能額を試算したところ、日本と比較して韓国は約12倍、米国は約10倍、台湾は約4倍という結果となりました。

日本の半導体産業の強化に向けた政策提言活動は、今後も継続的に実施していくつもりですが、今回の受賞を糧に、日本の半導体産業は、デジタル化やカーボンニュートラルを実現するためのカギとなる産業として、より一層の自助努力を積み重ねるとともに社会に対する責務を果たし、様々な社会課題の解決や次世代を担う人材育成の取組みに尽力し、努力を積み重ねていきたいと考えております。