WSCは、公正な競争の促進、技術革新の進展、健全な環境・安全対策の実施等半導体産業における世界的な関心事項に取り組むことを目的として、環境対策、知的財産権保護、貿易と投資の自由化及び市場開発等の分野における協力を推進している。WSCの活動は、世界貿易機関(WTO)ルールとWSCメンバーを構成する業界団体の国・地域で定められた法律に基づき、公正であることと市場原理を尊重することを前提として実施している。また、WSCでは、市場は開放されかつ競争的であるべきことを確認した。本会議には、独占禁止法弁護士も出席した。
会議は、各団体の代表――本会議の司会を務めるJEITA・長澤紘一氏に続き、EECA/ESIAはウルリッヒ・シューマッハ氏の代理として、アーサ・バン・デ・ポール氏、KSIA・李潤雨(ユン・ウ・イ)氏、SIA・ブライアン・ハラ氏、TSIA・モーリス・チャン氏――が開会の挨拶を行った。また、NTTドコモ・大星公二会長が「移動通信サービスの技術とアプリケーションの現状及び将来展望」と題する特別公演を行った。
- 世界的な環境保護を目指した協力体制
WSCは、健全かつ科学的根拠に基づく積極的な環境対策を推進することを改めて表明し、地球環境の保護を目指して世界各地域の半導体業界が実施してきた貢献を今後とも継続していくことを確認した。
各国半導体業界の地球環境への保護への認識と関心は、それだけに留まらず、環境当局と密接な関係を持って自ら環境政策を立案していくことを意味する。WSCは、政府の環境対策の策定に積極的に貢献しつつ、可能な限り共通のアプローチを行い、環境問題の初期の段階から、また環境に関する立法の当初の段階から、相互に共通の情報を持つよう努めることで同意した。
(1) | PFC排出削減
5極が表明したPFC排出削減に関する国際的な共通のガイドラインを承認した。このガイドラインは、JEITA、ESIA、SIAでは1995年を基準年として、KSIAは1997年を基準年として、TSIAは1998年を基準年として、PFCの排出を2010年で10%削減することを目標とするものである。
PFC排出削減に向けた国際的な共通の目標を達成するための行動計画に関する基本的な考え方が本会議に提出され、排出量の算出方法やPFC排出に関する報告書の様式の共通化などが協議され、承認された。 |
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(2) | 化学物質の管理と省エネルギー
WSCは、環境安全タスクフォースから提出された化学物質の管理の国際協力の促進について合意した。環境安全タスクフォースから提示されたペーパーは、主に半導体製造ラインを対象としたもので、顧客および工場の従業員の健康問題と危機管理対策に関する環境面での関心事項とリサイクル、リュース(再利用)、レデュース(削減)の3R対策から成り立っている。WSCは、化学物質の管理と省エネルギーに関する行動計画を6ヶ月以内に提示することを各国に要請した。 |
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(3) | 他の環境安全に関する活動
WSCは、上記に加え、下記項目について今後、協議することとなった。
1. 欧州を始めとする各国における鉛フリーの扱い
2. 環境に関連した各国・地域の問題について意見交換
3. 環境問題の基本原則の確立
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WSCは、政府の環境対策として規制される可能性のある、環境保護上危険な物質を制限ないしは段階的に廃止するために、原則的かつ科学的に裏打ちされた提案が行われることを期待されている。今日の地球環境の中で、全ての主要な生産国・地域が協力すること、また各国・地域が、規制の対象となるに至った科学的な根拠を共通して利用出来ることが極めて重要となっている。
電子製品からの鉛除去提案について、WSCメンバーは可能な限り必要最小限とするよう努めているが、あまりにも部品の開発が多岐にわたっている。専門家によれば約20万の半完成品と約20万の製品が鉛禁止の影響を受けるだろうとしている。電子部品を鉛フリーで製造することは技術的に困難な状況にあり、いつ可能となるかも明らかになっていない。鉛禁止に関する欧州の規制案は期限と対象製品の範囲がきわめて厳しいものである。欧州の鉛禁止は2006年までの鉛の除去を求めているもので、技術上の問題により、製品が作れなくなったり、信頼がそこなわれることにより除外適用が要請されることになろう。
- インターネット社会の成長を支えるために
情報技術(IT)関連製品とインフラの整備によって、インターネットは目覚しい成長を遂げており、半導体がそれを支えている。インターネットと関連したIT分野の成長は、経済を成長させ、教育を改革し、新しい産業を創造し、これまでの産業を変革しており、コミュニケーションが更に加速化されつつある。インターネットの発展は、より高度な生活をするために効果的な手段として期待されており、今日、半導体産業の成長の一翼を担っている。このことから、昨年のWSCでは「インターネット白書」を採択し、電子商取引における関税撤廃等インターネットの成長をもたらす政策の推進に焦点を当てた。
課税と関税からプライバシーとセキュリティまで、半導体産業の働きかけもあって大きく成長し続けたインターネットを管理する政策を変化した。世界の半導体サプライヤを代表する業界団体は、インターネット及び電子商取引の発展を妨げるのではなく、むしろより成長させるための政策を採用するよう政府当局を促している。最も優れたアプローチは、可能な限り産業界に委ねることであり、一方、政府としては十分予測可能なかつ透明性の高い規制に徹することである。
WSCは、本年の会議においても、WSCメンバーの政府および当局に対して、添付の通り、本件に関して具体的に要望することで合意した。
- 自由かつ開放された市場
WSCは、世界の全ての市場は関税及び非関税障壁を撤廃すべきであることを基本とすることを改めて確認し、政府に対しては、知的財産権を保護し、政府の施策と規制は完全な透明性が確保されるべきであり、全ての市場において外国製品の差別を撤廃し、技術移転を前提とする投資誘致は終了するよう求めるものである。WSCは、世界中の消費者が、IT(情報技術)の恩恵を享受できるよう、情報技術協定(ITA)未加盟の国々にもITAへの参加を求めるものである。
また、WSCは中国が世界貿易機関(WTO)へ早期に加盟し、ITAへの早期参加を促し、半導体及び他の情報技術製品の関税が撤廃されることを求めるものである。
- 半導体市場と貿易統計
本会議では、半導体の市場規模、市場の伸長等半導体の市場動向と貿易統計について報告があり、意見交換が行われた。長期的に見れば、半導体業界は依然として成長力のある産業である。
- 中国市場
SIAの代表から、「中国における半導体市場の発展」と題する報告があり、半導体業界にとって中国市場が重要であることが報告された。
- 将来の半導体技術の開発
WSCは、半導体の設計、生産技術に多大な費用がかかり、また広範な技術が必要となっていることを認識している。これらの課題を適正に評価するためには、国際的な協力と努力が必要である。このため、WSCでは引き続き、「半導体技術に関する国際フォーラム(IFST)の開催と「半導体技術の国際ロードマップ(ITRS)」の作成を支援していく。本会議では、JEITAより100nmから70nmの技術開発に関する「あすか」プロジェクト技術開発に関する国際協力の取り組みについて報告があった。
- 市場原理に基づく競争
今回WSCでは、1999年6月10日のEU、米国、日本、韓国政府の共同声明の精神を再確認した。その共同声明では貿易をゆがめるような措置が企業競争の決定要因となるべきではないと述べている。
- 政府への報告
本日の結果については、6月28日に米国・カリフォルニア州で開催される年次のWSC代表者と政府の協議に検討用として、WSCメンバーの政府及び当局に提出される。政府及び当局へ提出されるレポートは、下記の通り。
(1) | 業界の専門家によって作成された半導体市場と貿易統計に関するレポート |
(2) | インターネットの政策及び他の貿易関連事項に関する政府及び当局への要望 |
(3) | ITAの加盟拡大 |
(4) | 環境・安全活動に関するレポートと提案 |
- 次回会合
次回WSC会議は、2002年5月にSIAの主催によって、カリフォルニアにて行われる予定である。
- WSCホームページ
WSCは、2000年6月に新しいホームページを開設した。
http://www.semiconductorcouncil.org
WSC参加メンバーの情報については、下記ホームページ参照。