社団法人 電子情報技術産業協会 会長 町田勝彦
― グリーンITイニシアティブ元年を迎えて ―
年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。 昨年の世界経済を振り返りますと、原油高に加え米国でのサブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱など、波乱の多い一年でありました。新たに迎える2008年においても、原材料の高騰や欧米先進諸国経済の減速などの懸念材料が引き続き下振れリスクとしてあり、予断を許さないところであります。しかしながら一方では、いわゆるデカップリングの現象としてBRICs経済の持続的高成長が期待できることや、北京オリンピックを契機とした世界的なデジタル機器の普及機運の盛り上がりもあり、更には新OS搭載パソコンの需要がいよいよ本格化するのではないかといった明るい材料も期待できるところであります。年末に取りまとめさせていただいた当協会の「電子情報産業の世界生産見通し」においても、2008年の電子情報産業の世界生産額は243兆円と前年同期比7%のプラス成長が予測され、わが国電子情報産業もほぼ同様の成長率を示し、いよいよ50兆円の大台に乗せる規模になるだろうとの予測が行われております。 しかしながら、産業としてこうした成長を円滑に遂げていく過程において、様々な課題が待ち受けていることも事実であります。なかでも、私ども電子情報産業を待ち受ける最大の課題は、地球環境問題ではないでしょうか。今年はこれまでのフレームワークである京都議定書の「約束期間」が始まる年であるとともに、「ポスト京都」のあり方についての議論が7月開催予定の洞爺湖サミット等を通じて本格化するという二重の意味で、大きな節目の年となります。 こうしたなかで、IT機器の省エネに関した動きをみますと、IT革命の進展を通じてネットを経由する情報量の飛躍的な増大が予想されております。経済産業省の見通しにおいても、今後約20年の間にインターネット内の情報流通量は約200倍にも膨れ上がると見込まれており、その結果IT機器による消費電力量の急増が予想されるなど、深刻な課題になりつつあるとの認識が示されております。 こうしたいわゆる「情報爆発」の下で、IT・エレクトロニクス機器の一層の省エネ化が強く期待されるとともに、優れたIT・エレクトロニクスの活用を通じた社会全体の省エネ化への貢献があわせて求められてまいります。JEITAとしては、日本電機工業会など他の関係団体とも連携し、また政府の支援も頂きながら、いわゆるグリーンITイニシアティブの推進のための協議会、グリーンIT推進協議会(仮称)を新年のできるだけ早い時期に発足させたいと考えております。この「グリーンIT推進協議会」の下で、IT・エレクトロニクス機器・部品・デバイスの一層の省エネ化を図るための各般の革新的技術の開発を加速させるとともに、わが国電子情報産業の持つ世界に冠たる省エネ・環境技術力、環境ソリューション能力を世界にアピールして行きたいと思います。 なお、目を他の課題に転じますと、イコールフッティングの競争環境の確保に向けての取組みが引き続き重要な課題であります。他の諸国とのアンバランスが目立ってきている法人税率の引き下げの課題、日・EUを始めとする自由貿易協定・経済連携協定(FTA・EPA)の締結促進、更にはデジタル・コンバージェンスの流れと情報技術協定(ITA)などの間で構造的に生じている制度的桎梏への対応など、課題は山積しています。著作権制度のあり方についても、デジタル技術の進展と十分調和したバランスのとれた解決を図っていく必要があります。 このように課題の多い新年ではありますが、会員各位の皆様のご支援ご協力の下で、西神田新オフィスを新たな活動拠点として、決意も新たに子年にふさわしい新しいスタートを切ってまいりたいと思います。2008年が皆様にとってよき年となることを心より祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。