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JEITA Hot Issues

第1回日米欧電子情報業界団体会議(4/7)の概要

JEITA の呼びかけによる初の試みとして、4月7日(木)、東京において「日米欧電子情報業界団体会議」を開催しました。米国のITI(情報技術産業協議会、Information Technology Industry Council)、EIA(米国電子連合会、Electronic Industries Alliance)、欧州のEICTA(欧州情報・通信・民生電子技術産業協会、European Information, Communications and Consumer Electronics Technology Industry Association)、そして当協会の代表が出席し、電子情報技術産業をめぐる重要な課題について集中的に意見交換を行い、それに基づいて提言をとりまとめました。

第1回日米欧電子情報業界団体会議の模様近年の電子情報技術産業をめぐる状況は、デジタル化、ネットワーク化が経済活動の効率化を通じて世界経済の成長の推進力となる一方で、デジタル化やネットワーク化への制度的対応の遅れなど様々な課題も顕在化しています。また電子報技術産業分野での中国、韓国など新興国の台頭による新たな課題も浮上しています。さらには地球温暖化などの環境問題が産業分野を超えた大きな課題として立ちはだかっています。

このような状況にあって世界の電子情報技術産業は課題の解決に向けて様々な努力を傾注してきましたが、その中心的存在である日本、米国、欧州の3極の産業界がより一層緊密に協力体制を築く必要があるとの観点から、当協会より米国、欧州の電子情報技術関係の業界団体である前記のITI、EIA、EICTAと米国CEA(Consumer Electronics Association)に呼びかけを行い、すべての団体の賛同が得られたため、日米欧3極の業界代表による会議を開催する運びとなりました。なおCEAは、出席を予定しておりましたが、やむをえない事情により今回は参加することができませんでした。
 会議では4つの重要な課題についてセッションを分けて集中的に議論し、提言をとりまとめました。各セッションで合意した提言については参加団体がそれぞれの独自の判断に基づき自国政府や関係機関等への働きかけ、要請の際に活用することにしています。課題別セッションの議論のポイントについて、以下、簡単にまとめました。
1.課題別セッション「知的財産の適切な保護」 (モデレータ:JEITA)
 このセッションでは模倣品問題、デジタルコンテンツの適切な利用及び世界特許システムの構築促進の各テーマについて議論しました。
  (1)模倣品問題
 本テーマのモデレータであるJEITAより、中国等で製造される模倣品に関する被害の深刻さと日本の国内外レベルでの取り組みの現状を説明し、電子・IT業界として三極間の連携活動を強化するべきとの提案を行いました。これに対し、EIAより、米国の業界団体としても同じ問題を抱えており、中央と地方の不統一、中国側の対策の客観的評価の必要性、中国政府の取組みと実態の乖離など対策の強化が必要との意見がありました。また、欧州EICTAからも、中国以外の国に対しても被害状況に適った対応が必要であるとの発言があり、今後は三極が連携してアクションプランに取り組んでいくことが合意されました。
  (2)デジタルコンテンツの適切な利用
 モデレータであるJEITAより、デジタル著作権管理技術(DRM)の進歩を踏まえ、適切なビジネスモデルの発展と「補償金制度(レビィ)」の適用対象拡大の反対及び将来的な廃止に向けて、三極が協力してその取組みを推進すべきであるとの提案を行いました。
 これに対し、ITIより、 デジタル著作権管理技術(DRM)の利用は今日のビジネスモデルの発展に不可欠のものであり、著作権の保護には「レビィ」に依存せず技術を活用することの重要性について更に強く主張すべきであるとの意見が出されました。また、EICTAからも、EU域内各国でのレビィの拡大は、消費者への負担増を強いており、DRMの採用の拡大によりその流れを変えるべく取り組んでいることの発言があり、三極が連携してレビィの拡大への反対とDRMを活用したビジネスの推進に向けて取り組むことが合意されました。
  (3)世界特許システムの構築促進
 モデレータであるJEITAより、特許システムの国際的ハーモナイゼーションの必要性の紹介があり、業界が連携して特許庁の取組みを支援するとともに中国等も含めた対話に拡げるべきであるとの提案がなされました。これに対し、EIA,ITIより、調和には賛成であり、電子・IT分野での調和に向けて三極として取り組むとともに、中国等途上国の特許制度の質の向上に関し併せて努力すべきであるとの主旨の発言がありました。EICTAからは EUでの経験を踏まえると困難が予想されるが、調和には賛成であり、また権利の安定のために高いレベルの審査が維持されるよう途上国も含めた取組みが必要との発言がありました。この結果以上、三極が連携して世界特許システムの推進及び途上国の特許制度の質の向上に向けた支援に取り組むことが合意されました。
2.課題別セッション「環境問題」 (モデレータ:欧州EICTA)
欧州においては、RoHS(電子・電気機器特定有害物質使用制限指令)、WEEE(廃電気・電子機器指令)、REACH(化学物質の登録、評価、認可)など各種の電機、電子産業に係わる環境規制があり、これらはEU域外でも環境規制のモデルとされている他、EU域外の企業も影響を受けているとの説明がEICTAよりありました。さらに、EICTAからはIT・電子業界は有害物質の使用削減、エネルギー効率の向上及びリサイクルの促進等の環境問題の重要性を認識し、それらに積極的に取り組んでいる業界だということを関係方面に働きかける必要があるとの意見が出されました。
JEITAからは、日本がIEC/TC111(電機電子機器の環境標準)の議長国として重要な役割を担っていくこととなったため、このTCで審議している標準化の促進について欧米業界の協力を要請があり、また温室効果ガス削減への取り組みについて、当業界として共通目標を設定するための意見交換の提案がありました。さらにはJIG(グリーン調達調査の共通化)に関して共同歩調をとりつつ、特にアジアへの普及を進めていきたい旨の意見表明がありました。
米国からはIT・電子業界は環境に配慮しており、環境負荷の少ない産業であるというポジティブなメッセージをもっと強調すべきであるとの発言がありました。
意見交換の結果、IT・電子業界は有害物質の使用削減、エネルギー効率の向上及びリサイクルの促進等に積極的に取り組んでいる業界であることを、より強くアピールしていく必要があるとの認識で一致しました。また温室効果ガス削減の共通目標の設定、およびグリーン調達共通化のアジア等への普及について協調することについても合意しました。
3.課題別セッション「通商問題」(モデレータ:米国ITI)
ITIより新技術の普及は多くのITとエレクトロニクス製品を融合させているにも拘らず、関税撤廃協定であるITAの対象から多くの品目が除外されており、また融合製品の関税分類の不統一により通関での混乱が生じているため、IT・エレクトロニクス製品の関税と非関税障壁の撤廃に向けたセクター別のNAMA交渉を開始し、早期の協定発効を目指すため、WTOメンバー各国の合意を得るべく行動すべきであると意見が出されました。
JEITAからはWTO・NAMA交渉のスケジュールに応じた「三極共同ペーパ」の作成と各国政府及び関係方面への働きかけ、及び、IT、AV機器のみならず民生用家電製品や事務機器及びそれらの部品も含めた関税引き下げをすすめるべきであるとの提案がありました。
EICTAからも、米国及び日本の業界団体が提案する関税撤廃、ITAの拡大、融合製品の関税分類の見直しを支持するとの表明がありました。同時に、欧州委員会はいずれにもネガティブであり、今後もその姿勢の継続が予想されることから、デジタル化社会の有用性や消費者への影響等を背景に更に強い働きかけするとともに、非関税障壁の撤廃についても同時にすすめるべきであるとの意見表明がありました。
討議の結果、6月のWTO・NAMA交渉に向けて、下記のアクションを取ることが合意されました。
  • 三極によるNAMA交渉対応(ジュネーブ)
    業界代表をジュネーブに派遣し、各国のNAMA交渉団への働きかけを行うべく計画を策定する
  • 「三極共同ペーパ」の作成
    論点を明確にするため共同ペーパを作成する
  • 各国・地域及び関係機関への働きかけ
三極がそれぞれの政府に働きかける他、それぞれの関係機関にも協力、連携を求めることとし、途上国も含めた各国への働きかけも分担して行う
4.課題別セッション「標準化問題」(モデレータ:米国ITI) 
 このセッションではモデレータ提案であるアクセシビリティ標準、IECガイダンス、中国独自規格の問題とJEITA提案のホームネットワーク標準化の問題について意見交換をしました。
  (1)アクセシビリティ標準
 モデレータであるITIより、全世界の約6億人の障害者、高齢者が健常者と同様に情報機器にアクセス出来ることは重要であり、ISO/IEC JTC 1アクセシビリティ特別作業部会(SWG)の調整作業を支持する等によりアクセシビリティ標準化を積極的に進めるべきとの提案がありました。JEITAからは、標準化は支持するが、既に地域別の独自規格として規定されているものについて配慮すべきとの提案があり、EICTAからは、モデレータ提案はサポートするがEUにおける実現には難しい面があるとの意見がありました。意見交換の結果、モデレータ提案を承認しました。
  (2)IECガイダンス
 ITIより、IEC標準が結果的に強制になる場合があるが、規制要件は一貫して、完全な正当性、適切性を保持し、レビューに適合し、市場のニーズに完全に応えなければならないとの観点から、米国国内委員会が6月に、IECに対してこうした目標を実現するためのガイダンスを提案する予定であり3極として支持を求める提案があり、意見交換を行った結果、既に存在する社会基盤に関する国家標準については、それを認めざるを得ない面もあるとの意見も出されたが、モデレータ提案を支持することとしました。
  (3)中国国家規格
ITIより、中国に対して国際規格を採用することにより国際的に認知されるのだということを認識してもらうことが必要でありこと、他の工業先進国に倣って民間企業が参加した標準化の形態に変えていくこと等を働きかける必要があるとの提案がありました。モデレータ提案を支持するとともに、日本や欧州、アメリカの標準化手法を中国に教えるよう努力することが必要との意見も出され、参加者の同意を得ました。
  (4)ホームネットワーク標準化
JEITAから、席上、ホームネットワーク標準化はこのままでは幾つかの機関でバラバラに審議されることになり効率が悪いなどの問題が生じるので、IEC/TC100を主審議機関とすることを提案しましたが、米国、欧州側のいずれからも、ホームネットワーク標準化の主審議機関IEC/TC100とするためには、各国団体会員企業の意向を確認する必要があり、本会議で決めることはできないと反対の表明があり、合意には至りませんでした。
5.総括会議
このセッションではJEITA総合政策部会の代表も加わって意見交換が行われました。
  (1)課題別セッションの報告
 各テーマ別会議のモデレータより、「知的財産の適切な保護」、「環境問題」、「通商問題」及び「標準化問題」の各会議の議事の内容について概略説明ならびに取りまとめた提言について報告があり、意見交換の結果、主旨の明確化を図るなど一部文言を修正のうえ、承認されました。
  (2) 次回開催について
次回開催時期、場所について意見交換の結果、ITIの主催により2006年中に米国で開催することが決まりました。

初の試みである今回の日米欧電子情報業界団体会議では、上記のとおり活発かつ有意義な意見交換が行われ、様々な課題の解決に向け協調して取り組むことが確認されました。その結果、すでにいくつかの具体的成果があがってきております。
例えば、通商問題についてはWTOのNAMA交渉に向けて共同ペーパを作成するとともに、ジュネーブで各国交渉団への働きかけを共同で行うなど具体的な計画が進行しております。また、欧州におけるカムコーダについての関税分類問題に関しても、欧州のEICTAが、日本がEU委員会向けに作成した要請書に署名するなど日本の立場を強く支持しております。
 米欧の参加団体からは今回の会議の成果を高く評価するとともに今後も継続すべきだとする声が聞かれ、各セッションの日本側参加者からも同様の評価を得ております。
 来年、米国において第2回目の会議を開催することが決まり、より具体的な内容について深く議論を行い、さらに世界の電子情報技術産業の発展に寄与することが期待されます。

 
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