スペシャルインタビュー第6回

近畿日本ツーリスト株式会社 未来創造室部長 安岡 宗秀 氏(1/2)

2015年9月16日

近畿日本ツーリスト株式会社未来創造室部長 安岡宗秀氏「スマートツーリズム ~タイムトリップツアー~」

「CPS/IoTスペシャルインタビュー」第6回は、CEATEC JAPAN 2015特別企画「NEXTストリート」に出展予定の近畿日本ツーリスト株式会社 未来創造室部長の安岡 宗秀 氏です。同社が推進している「スマートツーリズム」についてお話しを伺ってきました。

最先端技術と観光との融合

ーーーQ.まず最初に、CEATEC JAPANでの出展内容を教えてください。

出展テーマは、「スマートツーリズム ~タイムトリップツアー~」です。
当社は、今年2月から「スマートツーリズム ウェアラブル眼鏡でリアル体験!江戸城天守閣と日本橋 復元3Dツアー」や「福岡城スマートグラスツアー!城と史跡めぐりのふくおか散歩」を実施しているのですが、今回のCEATEC JAPANでは、ブース内で、実際にメガネ型のウェアラブル端末(以降、スマートグラス)を使って、そのようなツアーを模擬体験していただこうと思っています。

ーーーQ.スマートグラスを使ったツアーを体験できるのですね。しかし、旅行業界の近畿日本ツーリストが、今回、どうしてCEATEC JAPANに出展するのでしょうか?

観光業界とCEATEC JAPANは一見異業種ですよね。しかし、今回あえて出展を決めたのは、(出展ブースエリアの)NEXTストリートのテーマが「2020年の社会や生活がCPS/IoTによってどのように変わるのか」ということで、まさに当社が提唱している「最先端技術と観光を融合させたスマートツーリズム」と合致すると考えたからです。
また、今回展示するスマートグラスを使ったツアーは、「最先端技術と観光の融合」のひとつの事例であって、今後、他にも様々な展開を考えています。今回の出展が、さらに新たな技術との融合が生まれるきっかけとなることも大いに期待しています。

スマートグラスを使った観光ツアー

ーーーQ.「観光」と「スマートグラス」は、異色のコラボレーションのように思えますが、スマートグラスを使った観光ツアーが生まれたきっかけを教えてください。

当社では、昨年、未来創造室を設立し、いろいろな企業とのコラボレーションやアライアンスによって、何か新しいサービスを生み出したいと常々サーチしています。
その中で、端的に言うと、成長市場の一つとしてウェアラブル端末があり、一緒に何かできないかと考えたのがきっかけです。その頃偶然、ニュースでEPSON社のウェアラブルメガネを使って室内で映画を見ている映像を見て、これを観光で使えないかと考えたんです。
加えて、訪日外国人も増えているし、2020年の東京オリンピックもある中で、観光産業としては訪日外国人を取り込みたい。訪日外国人が観光で何に興味があるのかというと、歴史的建造物、城、街道、と言われているのですが、しかし、今の東京には城はないですよね。
だったら、東京にランドマークを作って、東京の魅力を海外の人にアピールしようという中から生まれたのが、江戸城と日本橋の昔の街並みの再現なのです。

ーーーQ.こうして「スマートグラス」と「観光」が結びついたわけですが、ツアーの実現までにはどのような苦労がありましたか。

スマートグラス

▲ツアーで使用された「スマートグラス」

スマートグラスはEPSON社のmoverioを使用していますが、本来、部屋で映画を見るためのグラスを屋外で使用するということ、1日にツアーで何回も使用すること、添乗員が案内する声を聴けるようにすること等の課題があり、EPSON社の協力でクリアしていきました。
また、コンテンツ面では、アスカラボ社にCGを作って頂きましたが、CGをゼロから作ろうとすると、期間も費用もかかるので、既存の素材を提供してもらいながら作り込んでいきました。

現地で体験するからこそ面白い

ーーーQ.実際に今年2月以降、ツアーを実施してみて参加者の反応はいかがでしたか?

8割の方は、面白い、という感想でした。
スマートグラスそのものが新しくて面白いというご意見と、映像として今実際には無い物が見ることができて面白いというご意見が多かったです。
一方で、「バーチャルリアリティ」や「3D」というタイトルから、飛び出して見えるような映像をイメージしていたのに、というご意見もありました。コンテンツの充実は今後の課題ですね。

「江戸城天守閣と日本橋 復元3Dツアー」で一番盛り上がるのは、天守閣の映像をお見せする時です。今は天守台しかない場所に、スマートグラスを通じてまさにそこに天守閣が現れると、歓声が上がります。これは、現地に行って、天守台の前で見るからこその面白みなのです。
江戸城の大広間も、芝生の上に立って、「今何もないここがこんな大広間だった」とご案内することで驚きがある。今、場所を移動しなくてもバーチャルで体験できるものは多いですが、あえて現地に行くからこそ体感できる面白さがあるのだと思います。

ーーーそれは旅行業界の貴社ならではのポイントですね。

そうですね。我々がやる意味は、ただ映像を見てもらうのではなく、江戸案内人とう語り部のガイドが、現地で当時の時代背景、歴史等を説明しながら魅力としてお伝えすることだと思っています。
まさしくこれが観光であり、スマートグラスは、その観光のサポートツールの一つなのです。


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