スペシャルインタビュー第6回
近畿日本ツーリスト株式会社 未来創造室部長 安岡 宗秀 氏(2/2)

2015年9月16日

「繋ぐ」ことで新しいサービスを生み出す


▲近畿日本ツーリスト株式会社 未来創造室部長 安岡 宗秀 氏

ーーーQ.そのようなツアーを生み出した「未来創造室」というのは、貴社の中でどういった役割を担っているのでしょうか?

未来創造室では、当社が旅行業で培ってきたリソースを使って、観光と他のものを「繋ぐ」ことで社会に貢献できるものは何かということを考えています。
例えば、地域活性化の一環としての農業体験ツアーや、少子化対策・女性活躍推進として首都圏のホテルで産後ケアを行うプラン、また、某社と連携して次世代コミュニティサイクルシステムという事業も行っています。
何かしら「他のもの」と当社のリソースを掛け合わせて、新しいサービス、今までにないサービスを生み出そうというのが「未来創造室」の役割なのです。
この取り組みの中で生まれたのが「最先端技術と観光を融合させたスマートツーリズム」で、その一環として、スマートグラスに着目したというわけです。

スマートツーリズムで地域活性化

ーーーQ.貴社のスマートツーリズムの今後の展望を教えてください。

スマートグラスを使ったツアーについては、まず東京で実施し、今後、福岡城や、世界遺産の富岡製糸場にも展開予定です。他にも多くの地方自治体から問い合わせが来ているので、多くの地域で展開していきたいですね。
地域に眠っている歴史的建造物であったり、復元できない史跡であったり、「昔はこういう場所だったのに今は何もない」という場所は国内にたくさんありますよね。こういう場所に、建設というハード面ではなく、ソフト面として、スマートグラスを活用して時代背景や人物が見えるようにして、それぞれの地域の眠っている魅力を引き出すことで、観光客を呼びこみ、地域活性化につなげていきたいと思っています。

また、スマートツーリズム全般で言うと、スマートグラスだけではなくいろいろな最先端技術を、観光の中に取り入れて新しいサービスを生み出していきたいですね。
2020年に向けた観光整備として、お年寄りや障害者も皆が楽しめる観光というのはテーマになっています。段差や坂が多い観光地が、我々の観光産業としてのノウハウと、例えばパーソナルモビリティ等の技術とが融合することで、皆が楽しめる観光地となる。こうしたことも含めて、スマートツーリズムとして当社が社会に貢献していけることは多くあると思っています。

ーーーより広い視点になりますが、観光産業全体の未来像はどうお考えですか?

Mr.Yasuoka旅行業界全体としては、今後人口減により国内における旅行の市場は縮小していくと思われます。国内旅行離れや、若い人の旅行離れという傾向もありますし、少子化になると修学旅行も減っていき、国内の全体的な旅行は減少すると考えられています。
一方で、外国人の訪日旅行は伸びていく見込みです。
その中で、今後の観光産業としては、訪日旅行に注力して本当の観光立国を目指す必要があります。
日本には、海外から見ても独特の文化、自然、季節など世界に誇れる素材が十分にあります。しかし、地域によってはその魅力をうまく伝えられていない所も多い。実は小さな町に非常に面白い観光素材が眠っているということは多々あります。こうした魅力を引き出して、日本としての観光の魅力を発信できるようなプロデュース業が、我々旅行業界の企業に求められてくると思います。

一例としては、過疎化が進んだ集落に、実はすごく歴史的に意味がある行事、祭り等があるのに、引き継ぐ人、担ぐ人がいなくなっているという現状から、当社は、某社と協力してクラウドファンディング事業を始めます。これは、文化保全に共感した方から資金を募り、その対価として、行事に参加するツアーを提供するというもの。皆で日本の観光素材を守っていくというのも一つの在り方なのです。
こうやって、地域を観光の力で引っ張っていくことが、我々の役目なのだと思っています。
あとは、アライアンスですね。他業種といろいろなところでアライアンスを組みながら、社会の課題に貢献しながら、新しい観光の形を作っていくことが重要だと思います。
旅行業界の企業は、ただ旅行に連れて行くのが仕事なのではなく、「人と人」、「企業と企業」、「人と地域」などを結びつけることに強みがあります。これを活かしていくことが、新しいビジネスのあり方だと思います。

こうした観光産業の未来像の実現のためにも、最先端技術との融合は重要です。スマートグラスを使ったツアーをご覧になった企業の方々から、自社の技術を観光や地域活性化に活用できないかと相談されることも多くあり、具体的に進んでいる案件もあります。
今後も、これまで全く想像しないような技術との融合により新しいサービスが生み出せるのではないかと期待しています。

次世代の観光を体感し、新たな融合を生み出す機会に

ーーーでは、最後に、CEATECに来場される方へのメッセージをお願いします。

ブースでは、スマートグラスを実際にかけていただき、江戸城だけではなく、福岡城や富岡製作所等、色々な地域の魅力を感じられるような映像をご覧いただく予定です。
是非お越しいただき、次世代の観光の形を体感してください。
また、当社は、スマートツーリズムを掲げ、スマートグラスを使った観光の実績とノウハウをもとに、さらなるコラボレーションを常に探しています。CEATECが、最先端技術と観光の融合による「次世代の観光」を生み出す機会となることを期待しています。

安岡 宗秀(やすおか・むねひで)
近畿日本ツーリスト株式会社 未来創造室部長

1987年 入社、学生専用海外パッケージ旅行の企画販売や法人団体営業などを経験
2006年 東京イベントコンベンション支店長
2011年 イベント・コンベンション・コングレス営業本部 販売部長(法人団体営業統括)
2013年 KNT-CTホールディングス 経営戦略部 部長(訪日プロジェクトなど)
2014年 営業統括本部 販売部 部長(新規事業開発、アライアンスなど)
2014年10月より、未来創造室 部長(マーケティング・ブランド・経営戦略・新規事業開発など)


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