スペシャルインタビュー第3回 元湯陣屋 代表取締役社長 宮崎 富夫氏(1/2)

2015年9月8日

元湯陣屋 代表取締役社長 宮崎富夫氏「顧客サービスをITで進化させる『陣屋コネクト』~お客様と共にこれから先の100年をつないでいく~」

広報室取材班がお届けする、CPS/IoTスペシャルインタビュー第3回は、CEATEC JAPAN2015にて講演を予定されております、元湯陣屋 代表取締役社長 宮崎 富夫氏です。

陣屋コネクト誕生 「無いものは自分で作れ」の精神による自社開発への決意

ーーーQ.はじめに、講演テーマである陣屋コネクトについて教えてください。また、既存システムではなく、自社で開発した理由についても教えてください。

Mr.Miyazaki社長就任当初、陣屋では色々と課題を抱えておりました。
売上低迷、利益が出ない、経費削減、これらをを解消するためにやらなくてはならないことが多くありました。PDCAサイクル(Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善))を早く回すことや、情報の見える化、仕事の効率化によりお客様と接する時間を増やしていくことが重要と感じ、そのためには基幹システムを導入する必要がありました。

当時、陣屋の基幹システムとして求められる要件をいくつか決めてシステムを探しておりましたがこれといったものは見つからず、また、中小企業が導入出来るような金額ではありませんでした。一番大きかったのはユーザ自身がカスタマイズすることがほとんど出来なかったことです。

とはいえ、顧客の個人情報は厳重に保管すべきであり、そこは世界トップでなくてはならないとも考えておりました。ホンダで働いていた経緯もあり、「ないものは作れ」の精神から、自社開発しようと決意しました。一からプラットフォームを作るわけにはいかないので、信頼性が高く、月額で利用することができ、そもそも顧客管理のベースがあるセールスフォースを選定し、SE経験のあるスタッフと共に開発を進めました。陣屋のコンセプト「物語に、息吹を」や、お客様と陣屋・スタッフ同士などを繋ぎたいという想いを込め、親しみが湧くように「陣屋コネクト」と名付けました。これが誕生に至った経緯です。

IT導入を実現させた経営者の実行力

ーーーQ.なるほど、中々一から変えられないですよね。導入にあたり苦労された点を教えてください。

陣屋コネクト導入当初、陣屋にはITリテラシーの高いスタッフは少なく、勤怠は給料に直結するので、そのシステムには必ずログインするものの、陣屋コネクトには、ログインする人はほとんどいなかった。そのため、勤怠も陣屋コネクトに取り込むことにした。そうすることにより、一番ハードルの高かった「スタッフのログイン」を達成することができた。

ーーーQ.スタッフに緊張感を持たせることが重要ですね。スタッフに使ってもらうためにどのようなことをしていたか教えてください。

重要な指示についても全て陣屋コネクト経由で伝達し、内容に関わらず見た後には必ず「いいね」を押すことを徹底させました。「いいね」を押していない人には見てないの?と個別に確認していた。そういった地道な作業を続けていただけです。

また、既存の(アナログ)設備と同じように見せることに注力した。例えばホワイトボードが置かれていた場所にディスプレイを配置しました。

エンジニアから経営者へ...180度異なる職種への転換

ーーーQ.もともとはエンジニアをされていたとのことですが、当初から経営に興味はあったのでしょうか。

父の他界と母が体調を崩した時期が重なったことをきっかけに陣屋旅館を継ぐことになりました。それまでは経営を考えたことはありませんでした。サービス業については戻ってきてから勉強を始めました。1年目はホテル学校に毎週通い、ホテル業の経営について学びました。そこで得たノウハウをシステムに落とし込んでいきました。
一方で相続を受けた後にリーマンショックがあり、資産の価値や売上も大きく下がり、いざ経営状況を見てみたら大変なことになっていた。旅館というものは伝統的に泊食分離をしておらず、決まった金額内で宿泊費や食材費など現場レベルでやりくりをしていた。そのため、利益率はバラバラであり、管理が全くと言っていいほど出来ていなかった。欧米系の企業は泊食分離が徹底されており、それに伴ない料金体系も変えている、ということも学びました。

ーーーQ.立て直しにあたって、データをもとに改善を進められたと思いますが、どれくらいの期間がかかったのか教えてください。

2009年10月に入社し、まずは現場を見て回りました。
当時は紙の台帳しかなく、まずはそれらを全てエクセルに入力する作業から開始しました。各部屋の稼働率などを1~2週間かけてまずは独自に分析しました。
分析開始から2ヶ月後には採算の合わないレストランを閉鎖し、また、部屋食を廃止しレストランに集約するなど新しい経営方針を打ち出しました。設備投資は出来ないので今あるものを使いながら変えていきました。
その際に様々な課題を感じたのでシステムを開発することを決意し、翌月にはセールスフォースと契約しました。


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