スペシャルインタビュー第1回 楽天技術研究所 代表 森 正弥 氏(1/2)

2015年8月4日

楽天株式会社執行役員・楽天技術研究所代表の森 正弥 氏「フィジカルな領域にもチャレンジしたい」

広報室取材班では、「CPS/IoTスペシャルインタビュー」をお届け致します。
第1回は、CEATEC JAPAN 2015特別企画「NEXTストリート」に出展予定の楽天株式会社執行役員・楽天技術研究所代表の森 正弥 氏です。
楽天株式会社は、今年6月から二子玉川の新社屋「楽天クリムゾンハウス」への移転を順次開始しており、今回その新しいオフィスにお邪魔しました。

単なる多角経営ではなく、楽天経済圏の創出である

ーーーQ.はじめに、楽天株式会社の事業について教えてください。

Mr.mori
楽天株式会社は、多様な事業を展開しています。
代表的なものが、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」、総合旅行サイト「楽天トラベル」、インターネットポータルサイトの「Infoseek」などです。それ以外にも金融サービス事業として、クレジットカード「楽天カード」、あるいは「楽天銀行」、「楽天証券」などがあります。
また、グループ会社にはMVNOサービスの「楽天モバイル」を扱っている通信サービス会社フュージョン・コミュニケーションズもあります。デジタルコンテンツビジネス事業も持っており、電子書籍サービスの「楽天kobo」や世界200か国以上で使われている「Viki」というビデオストリーミングサービスなども展開しています。
もちろん、プロ野球チームの「東北楽天ゴールデンイーグルス」もグループ会社が運営しています。

ーーーQ.なるほど、多様な事業展開に加えて、社内公用語を英語にするとか、社員食堂を基本的に無料で利用できる制度を導入するなど、何かと話題が多いですよね。

あえて質問しますが、楽天を一言で表現するとどうなりますか?

なかなか一言では、難しいですね。

ただ、私たち楽天は、単純に多角経営展開をするのではなく、楽天自身が持つビジネスプラットフォームを他のビジネスとシナジーさせながら大きくしていくビジョンを持っています。

ですから、ご質問の一言で申し上げると、「楽天経済圏を通して世界に新しい価値を提供していく」会社だと言えますね。

その中で、「eコマース」、「金融サービス」、「デジタルコンテンツ」、この三本柱によって形成される経済圏が中心的な事業戦略になります。逆に言うと、もう楽天はeコマースだけの会社ではない。

海外の方に楽天の説明をすると、非常に驚かれます。

こんな会社は見たことがないって。 例えば、ある程度成熟したベンチャーさんがいたとして、先のビジョンが描けないみたいなところがあります。でも、楽天は様々な事業と融合させながら、経済圏を広げていく戦略で、こんなビジョンがあるんだと驚かれます。いい意味で。

研究開発をやらなければインターネット企業は伸びていかない

ーーーQ.森さんは、楽天株式会社の研究開発部門である楽天技術研究所の代表を務めていらっしゃいますが、楽天技術研究所とはどのような研究所でしょうか?

Mr.mori東京、ニューヨーク、パリの3拠点に今年の7月に始動したボストン、シンガポールの2拠点を加えた、計5拠点からなるグローバルな研究所です。所員が世界で75名程おり、日々インターネットの最新技術の研究開発をしています。詳細な話に入る前にまず、楽天技術研究所の設立の経緯からお話させてください。

今から10年ほど前の2004年から2006年頃は、日本でインターネット企業の研究所を作ろうという機運が高まった時期でした。当時、「ウェブ2.0」というキーワードが流行っていたことが印象に残っています。
実はその当時から、特にエンタープライズの世界では、I o Tのビジョンが先行していて、これからは「モノのインターネット」の時代だと盛り上がっていました。そして、インターネットはもう終わりだ、という観測が支配的でした。

でも、私自身はそういう感覚がなかったんです。まだ、そこにはいかないだろう。その前に、インターネットはもっとすごくなるだろうと思っていました。同時に、研究開発をきちんとやらなければインターネット企業は伸びていかない。つまり、各社研究開発が必要になるだろうと考えました。
また、日本の大企業のIT利活用が非常に遅れていることを痛感する機会もあって、日本はこのままだとまずい、という思いもありました。

そこで、日本の企業でインターネットの研究所をやりたいと色々な方とコンタクトしていた時に、楽天の当時の取締役に会う機会がありました。そこで、楽天技術研究所の構想を話したら、「是非それはやってくれ、チャレンジしてくれ」という話になり、楽天で自分の想いをぶつけようと思いました。


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