スペシャルインタビュー第8回

NEC 技術イノベーション戦略本部 本部長 望月 康則 氏(1/2)

2015年9月28日

NEC技術イノベーション戦略本部本部長 望月康則氏「IoTによる社会価値創造」

CPS/IoTスペシャルインタビュー第8回は、CEATEC JAPAN 2015コンファレンスでご講演予定のNEC 技術イノベーション戦略本部本部長 望月 康則 氏にお話しを伺いました。

IoTによる社会価値創造の提供

ーーーQ.今回の講演テーマの概要を簡単にご紹介いただけますでしょうか?

­NECは、2年前の2013年に自らを社会価値創造型企業と定義し、人が豊かに生きるための安全・安心・効率的・公平な社会の実現に向けて、ICTの力で新しい社会インフラを創る「社会ソリューション事業」へ注力しています。IoTは、社会課題の解決に密接に関係していますので、CEATECの講演では、NECの目指す社会価値創造、NECが考えるIoTとその具体事例をご説明します。

ーーーQ.NECでは、事業戦略上、IoTをどのようなものとして捉えていますか?

IoTは、世の中では最初に製造や流通など、モノづくりの中で活用するものとして広まりました。これに関しては、NECも2015年6月に「NEC Industrial IoT」として広報発表しました。しかし、NECのIoTはこれに留まりません。我々が考えるIoTの価値は明確です。
実世界からデータを収集し、サイバー空間に取り込み、データサイエンスに基づく高度な分析や解析によって、サイバー空間の中で新たな価値を創造します。それを実世界に戻し、社会・産業・生活に対して高速かつリアルタイムに反映させる、というのがハイレベルでのコンセプトです。
また、サイバー攻撃などに対してシステムが安全・安心に使えるか、IoTのセキュリティも大きな課題です。自動車や電車がハッキングされたら、それは社会的には大変な損失になります。従って、セキュアなサイバーシステムを提供・維持することに対しても、NECは非常に力を入れています。この二点からIoTにおけるNECの立ち位置を大局的に整理しています。

ーーーQ.IoTに関連して、どのような取り組み(事業)をされていますか?

NECは、IoTという言葉が広まる前から、IoTに関連した取り組みを行ってきていました。例えば、中国電力様の発電所では、3,000個以上のセンサーからの情報を独自の解析技術で分析して、人が判断するよりも早くシステム故障の予兆を検知するソリューションを導入していただきました。発電所やプラントなどの重要な大規模システムでは、そのシステムダウンは、社会的にも経済的にも大きな損失となります。稼働停止の状況を予防しながら、オーバーホールを計画的に実施することが可能となることに価値を認めて頂きました。

世界No.1/Only 1を基にしたトータルソリューションを創出

ーーーQ.IoTにおいて、NECの強みのある技術は何とお考えですか?


もともと当社には、サイバーセキュリティに関して長年に渡って培ってきた世界水準の暗号技術があります。IoTのセキュリティという観点では、暗号が強固なものでも、一方で計算量が多すぎて処理が遅くなるということでは十分ではありません。今後、IoTの処理は、大きなデータセンターだけで実行するのではなく、様々なフィールド上のデバイスなどでも分散実行されるでしょう。NECは、軽量だけど強く、接続する際の認証も組み込んだ暗号を提供しています。
しかしながら、セキュリティは、強いものが一点あれば大丈夫という訳ではなく、総合的な防御として実現しなくてはいけないものです。システムのセキュリティ、ネットワークのセキュリティ、それを運営する組織、人のリテラシーを含めた総合的な強化と連携が必要になります。また、暗号を平文に戻さないで暗号化されたままで計算処理してしまう究極の秘匿計算技術もあります。暗号を平文に戻さなければ、データセンターのオペレータに悪意のある人がいても悪いことができないからです。さらに、顧客に対して、どのような攻撃があるかなどの情報提供を含めたトータルソリューションを創出し、提供しています。

また、NECの研究所には、世界No.1、Only 1の技術が複数あり、それらに集中して研究を強化しています。例えば、データの分析技術や画像認識技術です。
アルゼンチンのティグレ市には、NECの顔認証技術に基づく街中映像監視システムを採用いただきました。ティグレ市では、本システムの利用により、犯罪率の減少が実証されています。犯罪は、起きた後の迅速な対応も大切ですが、そもそも起きないようにすることがより重要です。当社の顔認証技術は、米国の標準機関であるNISTのベンチマークにおいて3回連続でダントツの一位となりました。世界No.1の技術を利用したいというニーズは、ティグレ市だけではなく、米国、シンガポールや香港など多くの国であります。
また、顔認証は必ずしも警察などの公的用途だけに使われるわけではありません。例えばホテルなどの接客業に対しては、即座にVIPを検知して顧客満足度を高めることなどを提案しています。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン様では、年間パスを顔認証で行っています。コストダウンに加えて、来場者を迅速に入場させることで顧客満足を高めています。
このように、顧客価値との合致点をうまく見出しながら社会価値を創出しています。


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