スペシャルインタビュー第8回

NEC 技術イノベーション戦略本部 本部長 望月 康則 氏(2/2)

2015年9月28日

IoTは、実世界の制御からヒトの高度な判断支援へと価値創出のレベルを上げていく


▲NEC 技術イノベーション戦略本部 本部長 望月 康則 氏

ーーーQ.望月様が統括されている「技術イノベーション戦略本部」は、社内でどのような役割を担っているセクションですか?

私が本部長を務める技術イノベーション戦略本部は、ビジネスイノベーション(以下BI)統括ユニット内の一組織です。
まず、NEC全体の事業遂行体制から説明させていただくと、顧客タイプ別にソリューションを提供するビジネスユニット群を縦串の組織とすれば、横串の組織として、上記ビジネスユニットに共通なシステム基盤を提供するシステムプラットフォーム・ビジネスユニット、営業、SI・サービス&エンジニアリング、サプライチェーンをそれぞれ統括するユニット群、中央研究所、コーポレート機能とともに、全社で注力する新しい領域を立ち上げる戦略を立案・実行推進するBI統括ユニットがあります。BI統括ユニットの中には本部レベルの組織が11あり、全社で取り組むべき大事な事業として、マイナンバー関連の「番号事業推進本部」や「東京オリンピック・パラリンピック推進本部」もあります。弊社は、パブリックセーフティ先進製品とネットワーク製品で、東京2020ゴールドパートナーになっています。
技術イノベーション戦略本部の役割ですが、全社の技術戦略を取りまとめて立案、統括しています。各ビジネスユニットからも中央研究所へ個別に技術開発の要請を行っていますが、全社レベルで見た時に、戦略的に重要な領域を強くできているか、抜けが無いかなど、全社として技術開発が適正な方針になっているかを整理・俯瞰して、トップマネジメントに提言を行っています。

ーーーQ.今後IoTによって世界やビジネスはどのように変わっていくとお考えですか?

Mr.Mochizuki
既にIoTは始まっています。
サイバー空間の中で実世界のデータを分析し、価値を創出し、それを実世界に戻すことが、今後は本格的に広く求められると思っています。その時、IoTによるサービスが重要になります。
最近、その一例を広報発表しましたが、サイバー側での分析結果に基づいてタクシーを誘導することで、タクシーの実車率(総走行距離のうち、実際にお客さんを乗せて走行した距離の割合)が上がる効果があることが実証できました。広い意味でのアクチュエーション(実世界の制御)として、技術を適用することが次の大きなステップだと思っています。
実世界の制御は、人工知能とも連携し、モノの制御から人へのアドバイス、人の行動、意思決定支援なども実現できる技術になっていくべきです。より高度な判断支援をしていくことが大切で、単なる情報のレベルから知識のレベルへ、更に知識のレベルを知性のレベルへと価値創出のレベルを上げていくべきです。将来的にはコンピューティングそのものを非ノイマン型など右脳的にすることで、より高い価値を創出していきたいと思っています。

安全・安心・効率的・公平な社会の実現に向けた取り組み

ーーーQ.CEATECコンファレンスの聴講者には、ITベンダー、とりわけCPS/IoTの潮流やビジネスに関心のある方が想定されます。彼らに対して、一言お願いいたします。

ビジネスとして見たIoTは、米国のインターネット企業などによる新たなビジネスモデルに基づくサービスや、Industry4.0に代表される製造、流通分野での価値創出に注目が集まっています。それらに加えて、都市の安全・安心、社会インフラの効率化、保全など、社会課題を解決しいていくことも、長期的に非常に重要なことです。IoTは、次第に社会のサービスや安全性をより高める社会ソリューションの分野へ適用が拡大していくと思われます。
私たちは、社会的に高い価値をお届けするというNECのビジョンの実現に向かって技術開発で努力しています。NIST(米国国立標準技術研究所)の顔認証技術コンテストにおいて3回連続で世界一になったことは、もちろん嬉しいのですが、この技術を活用した街中映像監視システムにより、実際に都市の犯罪率が低下した(アルゼンチン・ティグレ市)など、社会価値を実現できたことこそ、本当に頑張ったかいがあると実感できます。
NECのIoTは、社会価値の創造までしっかりつなげていきたいと思っています。IoTは今後、ますます重要になるものですので、これからも強化を継続していきます。NECがお届けしたいのは、安全・安心・効率的・公平な社会を実現するIoTシステムですが、それらは一社だけで創れるものではありません。

是非、皆様と一緒に、IoTでより高い価値を創らせて頂きたいと考えています。

望月 康則(もちづき・やすのり)
NEC 技術イノベーション戦略本部 本部長
東京大学工学部電子工学科卒業。同大学院博士課程を修了し1987年にNEC(基礎研究所)に入社。その後、先端LSI、メディア情報処理、情報科学、等の研究部門長を経て2012年中央研究所支配人、2013年より中央研究所理事。また2013年からは、全社の技術戦略を取り纏める技術イノベーション戦略本部の本部長も担当。


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