スペシャルインタビュー第2回

国立大学法人横浜国立大学 先端科学高等研究院 上席特別教授

内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) プログラムディレクター

藤野 陽三 氏(1/2)

2015年9月8日

内閣府SIPプログラムディレクター藤野 陽三 氏「業界の垣根を越えたコミュニケーションがCPS/IoT社会を実現させる」

CPS/IoTスペシャルインタビュー 第2回は、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」のプログラムディレクターを務める横浜国立大学 上席特別教授の藤野 陽三 氏です。CEATEC JAPAN 2015特別企画「NEXTストリート」では、世界最先端のIT技術を活用したSIPの研究開発成果をご紹介いただく予定です。今回は藤野氏が政策参与を務める内閣府に伺いインタビューを行いました。

過酷な環境で培われた技術は世界で通用する

ーーーQ.まず始めに、先生の研究領域について教えてください。
これまでレインボーブリッジなど橋にまつわる様々なプロジェクトに関わってこられたようですね。

私の専門はなかなか一言では難しいのですが、いつも“橋の関係論”と言っています。国際関係論が国際社会におけるあらゆる事象を研究対象としているように、橋に関することはなんでもやります。設計やデザイン、耐震、耐風、維持管理すべてが自分の研究分野だと思っています。
もっと言ってしまえば、研究になることならなんでも興味があるので、インフラに関わるあらゆることをやります。

ーーーQ.これまでのご経験から、海外に比べて日本の橋の優れているところを聞かせてください。

Prof.Fujino
日本の技術全般に言えることですが、きめ細かさというか緻密なところに注意を払うところが優れていますね。これは材料についても言えることで、コンクリートやスチールにしても良質です。

橋に限らず日本のインフラは、諸外国に比べて非常に苛酷な環境下に曝されています。例えばコンクリートはドライな環境のほうが長持ちしますが、日本は高温多湿な季節もあれば雪の降る季節もあるので厳しい環境と言えます。日本特有の四季はインフラの劣化を促進させますが、ここで培った技術は世界に通用すると言えるでしょう。

IT業界への期待と連携の必要性

ーーーQ.SIPのプロジェクトにも通じるところですが、インフラの老朽化への対応にあたってどのようなことが課題なのでしょうか?

Prof.Fujinoコンクリートを例に挙げると分かりやすいと思いますが、中が見えませんよね。中には大事な鉄筋等が入っているにもかかわらず、その状態が目視できないということが課題の1つでしょう。工業製品の多くは検査のために分解することができますが、インフラの場合はそれができません。加えて検査対象となるインフラの数が多いことも課題です。したがって、迅速に低コストで状態を把握できる技術開発が必要となります。

インフラのなかでも橋について言えば、例えば日本中から10メートルの橋を集めて比較すると、同じものは1つもないのです。もちろん建設する上での基本的なルールはありますが、設計者が違えば出来上がりも違います。他にも使われるコンクリートが北海道で調達したものか九州で調達したものか、橋がつくられたときの天候が良いか悪いかによっても出来上がりが変わってきます。

ーーーQ.課題の解決にあたって今後はIT・エレクトロニクスの活用が期待されそうですね。

計測にはセンサ等を使う必要がありますから、IT・エレクトロニクスに頼るところが多いですね。土木建築業界はそういった技術を専門に研究しているわけではありませんので。さらに検査機器をドローンとして飛ばしたり、収集した情報を処理したりする技術もIT・エレクトロニクスの活用が不可欠です。

コンクリートに詳しい人と半導体のセンサに詳しい人が一緒になって、見えないところを見るにはどうしたら良いのか考えることが大切です。これが、SIPのプロジェクトで掲げている“連携”です。

日本では橋やトンネルの点検が法律で義務化され、これから沢山のインフラを点検することになりますが、これを今までのように人の力だけで行うわけにはいきません。ここ数年で日本におけるインフラ維持管理という市場はとても大きなものになりました。


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