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プレスリリース

2007年5月25日

第11回WSC(世界半導体会議)の結果について

(社)電子情報技術産業協会

5月24日、スイス・ジュネーブにてWSC(World Semiconductor Council:世界半導体会議)の11回目となるミーティングを開催、日本、欧州、米国、韓国、チャイニーズ台北、中国の6極の半導体業界トップ23名が参加して世界の半導体共通の課題について意見交換した。中国の半導体業界は昨年9月にWSCに加盟したが、WSCのミーティングには今回、初めて出席した。

中国半導体業界のWSCへの初出席について、日本側の代表を務めた株式会社東芝執行役専務・セミコンダクター社社長の室町正志氏は、「中国が初めてWSCに出席したことにより、環境問題、知的財産権問題、関税問題など世界の半導体業界共通の課題を解決するステージが整った。半導体は製造業の中でも最もグローバルな業界であり、半導体のビジネスに国境はない。このため、貿易・投資の自由化、関税の撤廃、市場の開放、知的財産権の保護、環境問題などのグローバルな課題について、多国間での協議の場が必要であり、中国半導体業界のWSC参加により、WSCの存在価値と期待が一段と高まった」と語っている。

今回のハイライトは、WSCの開催に併せて、WTO(世界貿易機構)、WIPO(国連知的財産機関)などジュネーブの国際機関と交流し、直接、対話することが実現したことである。また、パスカル・ラミーWTO事務局長はWSCの招きに応じて、WSCの場で初めて特別講演を行った。

情報技術製品の世界輸出量はこの10年間にドルベースで倍以上に拡大、年平均8%の成長を遂げ、2005年には1兆4,500億ドルに到達し、世界の製品輸出の14%を占めるに至っている。ラミー事務局長は講演の中で、情報技術製品の自由化が交渉プロセスを踏むことなく達成されていることは感銘に値すると述べ、WTO創設以来、ITAが大きな成功を収めてきた、その中で半導体が果たしてきた役割は大きいものがあると語った。また、WTOはドーハラウンドの終結に向かって努力を継続しており、半導体業界の支援を要請した。半導体は情報化の基盤産業として、WSCは情報技術協定(ITA)を含むWTOイニシアチブを支持しており、改めてこの支持を確認した。

日本側代表の室町正志氏は、「半導体の目指すものはWTOと同一。今回、ジュネーブで開催したWSCはそれを強調したもので、ラミーWTO事務局長がWSCの場で特別講演をしたのは意義深い。半導体業界が多国間の通商問題について積極的に関わり、実績を積んできたことをWTOが高く評価した結果と認識している」と述べている。


WSCにおける主要な協議結果は、下記のとおり。
1.知的財産権の保護:
 新たに参加した中国半導体業界含め、模倣品対策に取り組むことを再確認した。

2.環境対策:

(1)

地球温暖化係数が高く、2010年まで10%の削減を目標としているPFC(パーフルオロコンパウンド)削減について、中国に参加するよう要請しており、WSC参加の全極により目標が達成されることが期待される(添付グラフ参照)。

(2)

フォトレジスト、反射防止膜など半導体プロセスで必須な化学物質として使用され、ストックホルム条約(POPs条約:高蓄積性と難分解化学物資に関する条約)で対象物質に指定することが検討されているPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)については、WSCでは2001年以降議題として取り上げ、2005年から削減に向けた努力を開始しており、代替品のあるものについては、2009年までに全廃することを確約している。

(3)

半導体を最終製品に組み込むことにより、最終製品のエネルギー使用量が節減されている。環境に配慮した世界の持続的発展にとっての半導体の役割及び貢献について、より詳細なデータを収集し発表していく方向について再確認した。

3.MCP関税撤廃:

MCP(マルチチップIC)の関税撤廃については、WSCの最大の成果であり、2006年4月から、中国を除く5極で施行されている。中国も9月にはMCP無税化協定に調印する見込みであることを今回のWSCの場で明らかにした。既に政府レベルでも他国・他地域が無税化協定に参加するよう求めることが確認されている。また、ICだけでなく、ICと一般電子部品や半導体素子が組み合わせられた新しいMCPが次々と製品化されており、MCPの定義を拡大していく方針についてもWSCで改めて確認、9月の半導体政府当局の協議(GAMS)までに定義作りを急ぐとともに2012年の新しい関税分類作成に向けて各国政府に働きかけていくことになった。

4.)原産地統一ルール:

原産地ルールが国・地域で異なっていることは、半導体貿易の拡大にとって阻害要因となっており、WSCは統一したシングル・ルールの重要性を強く認識している。WSCでは、WTO原産地規則委員会の動向に合わせて、業界の見解を同委員会に提出することになった。

WSCでは、今回の結果として共同声明(英文)を採択している。英文最終版及び日本語版は追って、当協会のWeb(http://www.jeita.or.jp)に掲載する予定。
次回は、2008年5月に台北にて開催する。

以 上


(参考)

  1. 日本側出席メンバー
    室町 正志
    株式会社東芝 執行役専務・セミコンダクター社社長
    伊藤  達
    株式会社ルネサステクノロジ 代表取締役会長&CEO
    藤井  滋
    富士通株式会社 経営執行役常務・電子デバイスビジネスグループ長兼電子デバイス事業本部長
    中島 俊雄
    NECエレクトロニクス株式会社 代表取締役社長
    上田 誠二
    松下電器産業株式会社 半導体社 技監 事業本部 最先端プロセス技術担当


  2. PFC排出削減目標(1995年を1とした時の放出量推移)




第11回「世界半導体会議(WSC)」共同声明文全文
[PDF]
WTO事務局長 Pascal Lamy氏のスピーチ[PDF]


(参考)

 

WSC(世界半導体会議)について


WSCとは、各国の半導体工業会が参加する会議の名称。1997年から年1回開催されている。現在の参加工業会は、米国、欧州、日本、韓国、台湾、中国の6工業会。併せて、GAMS(半導体に関する政府/当局間会合)も年1回開催される。WSCからGAMSに提言が行われ、GAMSはこの提言を審議しWSCにフィードバックする。



1996年7月、カナダ・バンクーバーで日米半導体協定について協議した際、今後の両国半導体業界のあり方について以下のように合意した。

@業界間の協力活動の継続:UCOM(3年間継続)、標準化、ESH(Environmental Safety and Health:環境、安全および健康問題)、知的財産権、貿易・投資の自由化。
A半導体市場・貿易フローの分析。
B半導体会議(SC、後にWSCと改称)の創設。この枠組みの中で@Aを実施する。

この日米業界の提唱を受け、各国の半導体業界団体が参加したWSCの活動が開始された。第1回は1997年4月、第3回WSC(1999年4月イタリアのフィユッジ)では、日本・米国・欧州・韓国・台湾の5団体が出席し、「新世界半導体会議」(New WSC)の枠組みについて文書合意がなされ、2007年5月の第11回まで、毎年開催されている(2006年8月に中国が参加)。

各国の団体間の関係が、貿易摩擦から業界間協調へと変化してきている。現在の目標は、自由市場で各国の企業が最善を尽くして、世界経済の発展に寄与するものである。



WSC:半導体メーカのトップレベル、JSTC(合同運営委員会)・TF:専門家レベル  (「ICガイドブック2006年版」「半導体部会記者懇談会資料」より)

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