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「我が国の中期目標」策定についての意見

 

(社)電子情報技術産業協会

 電機・電子業界は、日本が早期からの取り組みにより確立した世界最高クラスの高効率社会において、あらゆる場面に最先端の技術を組み込んだ製品を供給することにより、貢献を果たして参りました。今後も、更なる技術開発を継続し、豊かな低炭素社会の構築に向け、その一翼を率先的に担っていくこととしております。
 中期目標の策定は、上述の方針に大きな影響をもたらすことはもとより、今後約10年にわたる温暖化対策の方向を定め、その先の将来の対応も左右し、国民生活や日本経済に様々な影響をもたらすと考えることから、当業界の意見を以下の通り述べることといたします。


○提示された「選択肢」について

 豊かな低炭素社会を実現するための技術開発を強力に推進し、革新的な進化を浸透させていくことで世界に貢献を果たしていくことこそ、環境立国を標榜する我が国が進むべき方向であると確信しています。
 この実現を視野に入れて中期目標を検討するならば、「国際的な公平性」と「実現可能性」の観点が不可欠になるものと考えます。
 策定する値は国際的なコミットメント、すなわち国として達成義務が生じるものであることから、全ての主要排出国が参加のもとに、これらの国が公平な負担をすることを前提として検討される必要があります。
 半導体や液晶デバイスに代表されるような、激烈なグローバルな競争下で展開される事業において、これまでの取組が勘案されることなく、不公平な削減分担を求められることで過大な費用負担が発生すれば、産業の停滞や他国への流出を招きかねない上に、その先の大きな削減につながる将来への技術開発に向けた投資が具現化されないことになります。
 各国間の公正な競争による健全な発展が、世界規模での低炭素社会を実現する革新技術や環境配慮製品の創出を推進する原動力となります。
 また、実現可能性を伴わない目標値が設定され、クレジット等による補完を余儀なくされるならば、それは貴重な国富が実質的な削減につながらないかたちで流出するため、これも技術開発に遅滞を招くことになります。
 このような事態を避けるためには、十分に実現可能性の検証を経た、具体的な施策メニューを伴う削減目標を提示することが必要であり、それに対し、国民の理解を得た上で確定していく必要があります。
 我が国の中期目標は、これらの観点を大前提においた上で、選択肢①あるいは選択肢②を踏まえ、日本が最大限貢献できる値が望ましいと考えます。
 ポスト京都議定書の国際交渉において、京都議定書の経験を踏まえ、真に努力するものが評価されるよう、公平性を確保し、我が国の目標値の設定にあたっては、政府による適切な誘導策の確立を強く望みます。


○我が国の温暖化対策について

 地球温暖化問題の真の解決には、先に繰り返し述べた通り、革新的な技術の開発とその普及が必要不可欠なものとなります。
 電機・電子業界は、既に政府が策定している革新技術開発計画や技術戦略等の中で、原子力利用技術、太陽光発電、燃料電池等の新エネルギー発電技術、家電・事務機器等での省エネ技術、グリーンITや次世代省エネデバイス技術等の分野で、先進的な技術・製品開発の主導的な役割を担っており、経済・社会活動のあらゆる場面での展開が期待されております。
 これらの技術革新を一層進め、新たな技術を搭載したシステム・製品が浸透するためにも、志の高い明解なビジョンと地に足の着いた実現方策とその実行が両輪となり、豊かな低炭素社会を世界に先駆けて実現できるように、政府には議論の深化と適切な政策の実現を求めます。また、当業界もその具現化に向け、引き続き最大限の努力を払っていく所存であります。
 一方、PFC等3ガスを製造段階で使用している半導体や液晶分野では、これまでも国の積極的な支援策もあり、諸外国よりも高度な除害装置を導入する等、極限に近い対策を進めております。
 諸外国との対策比較といった実態把握が行われないままに、これ以上の排出削減が仮に求められるならば、工場の閉鎖や諸外国への流出等の究極的な対応を余儀なくされる可能性をはらんでおります。
 中期目標の検討においては、このようなリスクを慎重に見極めたうえで、現実的な目標が設定されることを要望いたします。