スペシャルインタビュー第9回
(株)日立製作所 研究開発グループ 技術戦略室 技術顧問 城石 芳博氏(1/2)

2015年9月30日

日立製作所 研究開発グループ 技術戦略室 技術顧問 城石 芳博氏「事業連携と顧客視点がCPS/IoTを推進させる」

「CPS/IoTスペシャルインタビュー」第9回は、CEATEC JAPAN 2015で講演を予定されている、(株)日立製作所 研究開発グループ、技術戦略室 技術顧問 城石 芳博 氏です。城石氏には、同社の取組みとともに、JEITAでの委員会活動を通じて、包括的な視点からCPS/IoTをどのようなものとして考えているかについてお話を伺いました。

「イノベーション」「グローバル」をテーマにCPS/IoTを推進する

ーーーQ.日立製作所は、CPS/IoTをどのようなものとして捉えていますか?

日立製作所は、今年5月に東原社長が「2015中期経営計画」を発表し、計画の中で「イノベーション」「グローバル」「トランスフォーメーション」という3つの柱をビジョンとして掲げました。*1
「イノベーション」は、サービス事業を強化して新たな価値を創造すること。
「グローバル」は、社会イノベーション事業をグローバルに提供して成長すること。
「トランスフォーメーション」は、業務のグローバル標準化と変化に迅速に対応して経営基盤を確立することです。特に「イノベーション」と「グローバル」の実現においてCPS/IoT分野の事業展開を計画しています。

日立製作所は、製造・物流・金融など様々な事業分野を広くカバーしていますので、展開している事業の全体像を見ながらCPS/IoTを取り入れようというのが基本スタンスです。
例えば、CPS/IoTに関する最近の物流分野での研究事例*2を紹介させて頂きますと、従来は、システムエンジニア(SE)が業務システムを使用して現場に業務指示を出していました。今回、企業が使う業務システムに日々蓄積されるビッグデータから、需要変動や業務現場の改善活動を理解し、適切な業務指示を行う人工知能を開発し、物流業務で効率を8%向上させることを実証しました。
これはCPS/IoTの良い例だと考えています。

*1:2015中期経営計画の進捗状況(PDF)

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2015/05/f_0514apre.pdf

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2015/05/f_0514a.pdf

*2:需要変動や現場の改善活動を理解して業務指示を行う人工知能を開発http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2015/09/0904.html

グループ内で得意分野を他分野に生かしつつ、他社とも連携していく

ーーーQ.CPS/IoT社会の中では、日立製作所の強みは何であるとお考えになりますか?

Dr.Shiroishi日立製作所は、様々な事業分野を持っており、個々の事業が持つ長所を他の事業に生かせることが強みの一つです。例えば、磁気ディスク装置HDD事業での私の経験ですが、機器事業分野の潤滑材技術や通信事業分野での信号処理技術などが薄膜媒体の高信頼化やHDDの高密度化などに大きく貢献し、事業が大きく発展しました。
また、お客様と直接対話するところから基礎基盤まで幅広く携わっている研究開発部門を持っていることも大きな強みです。お客様と課題・ビジョンを共有し、求めるものを引き出し、新コンセプト創出、プロト開発、デモを行い、さらに、提供するソリューションが課題解決にマッチしていることをシミュレーションでお客様に実証する。ここまでのサイクルを顧客協創部門に集約して研究開発に取り組んでいます。同時に、基礎研究部門では、AI等、将来の事業の核となる技術の研究にも取り組んでいます。

ーーーQ.他社との連携などもお考えでしょうか?

はい。
自前の技術を導入することはもちろん大切ですが、自前の技術を導入する分野と他社の技術を取り込む分野を切り分け、他社が強みを持つ技術を積極的に取り込み、お客様に迅速にイノベーションをサービスとして提供させて頂くことが重要だと考えています。
CPS/IoTのプラットフォームとして重要な高度データアナリティクスソフトウェア技術と、豊富な顧客基盤をもつ米ペンタホ社を買収したのは、その良い例です。


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