スペシャルインタビュー第10回
楽天株式会社 楽天技術研究所 シニアコーディネーター 三條 正裕 氏(1/2)

2015年10月1日

楽天株式会社楽天技術研究所シニアコーディネーター三條 正裕 氏「ネットの強みをリアルの世界に反映する段階にきている」

CPS/IoTスペシャルインタビュー第10回は楽天株式会社 楽天技術研究所 シニアコーディネーター 三條 正裕 氏です。三條さんにコーディネーターの仕事、そしてCEATEC JAPAN 2015出展への意気込みを伺いました。

技術とビジネスを繋げる橋渡し役 コーディネーターという仕事

ーーーQ.三條さんは楽天技術研究所のシニアコーディネーターということですが、このコーディネーターというのはどのような役割なのでしょうか?

楽天技術研究所は、楽天株式会社のR&Dにあたる組織なのですが、単に研究をするだけではなく、研究所で研究した成果や技術といったものを実際の現場に届ける役割があります。
研究者が研究をして、さらにその成果を研究者自身が現場に届けるのはかなり負担がかかります。そこで楽天技術研究所では、研究者の仕事を「リサーチャー」と「コーディネーター」に分け、開発とビジネスを繋げる橋渡し役としてコーディネーターという役割が生まれました。
私は、コーディネーターとして技術を事業部門や開発現場に届けることをやっています。また、社内だけではなく、学会や大学との共同研究など社外の取り組みも行っています。今回のCEATEC JAPANへの出展も社外的な取り組みの一つです。

ーーーQ.これまで展示会の仕事へはどのように関わってきましたか?

楽天株式会社では、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」で人気のグルメを集めた物産展「楽天市場 うまいもの大会」やユーザー参加・体験型イベント「楽フェス」、「楽天市場」の店長さんが一堂に会する「楽天EXPO」といったイベントを主催しています。
楽天技術研究所としてブースを持つわけではないですが、イベントで展示されるサービスの裏方として協力させていただきました。具体的には、今回のCEATEC JAPANの展示にも関係するデジタルサイネージを使ったサービスで技術協力しました。

ーーーQ.技術を実際のサービスに反映するに当たって、特にどういった点に注力されていますか?

「楽フェス」も「楽天市場 うまいもの大会」もそうなのですが、イベントにいらっしゃる方は技術に詳しい方は少なく、「インターネットを使ったことがない」、インターネットで買い物をすることはもちろんのこと「スマートフォンに触ったことがない」、というお客様が圧倒的に多いんです。
Mr_Sanjo
ですので、技術を前面に出して説明しても伝わらないことが多いのではないかと思います。サービスにほんのちょっと触れた時に「これ、なんか面白いぞ」と感じてもらうことを大切にしています。
「わお!」とか、「なにこれ?」といった反応から興味関心を引く、というのは大きいのかなと思っています。サービスの裏には、実はインターネットという世界があって、インターネット上にあるデータを見せているのですよ、といった説明をすると、「へえ!」みたいな驚きに変わっていきますね。
特にデパートのイベントですと、小さなお子さんもいらっしゃるので、ゲーム感覚で楽しんでいただいているようです。

核となるのは技術ではなく融合すること

ーーーQ.今回のCEATEC JAPAN「NEXTストリート」のテーマがCPS(サイバーフィジカルシステム)ということですが、楽天株式会社はCPSをどのように捉えてらっしゃいますか?

楽天は今までインターネット上でビジネスを展開してきました。インターネット上の様々なサービスが密接に繋がって楽天経済圏を構築しています。
そして、我々の取り組みというのはインターネット上だけではなく、リアルな世界にも拡がっています。例えば、通信サービスの「楽天モバイル」、プロ野球チームの「東北楽天ゴールデンイーグルス」などがそうです。これまでインターネット上で培ってきたデータ活用の強みを、リアルの世界に反映させる段階にきていると思っています。「ネットあってのリアル」ということを進めていきたいと考えています。
常にインターネットの利点をリアルに反映させながら、新しい世界、ビジネスを展開していくことに取り組んでいるところです。

ーーーQ.リアルと現実が融合したCPS社会の実現に向けて、どのような技術が核になると思われますか?ビッグデータ、セキュリティ、あるいはデータアナリシスなど色々と言われていますが。

そうですね。今までフィジカルな世界においては、核となる技術、例えば電気の発明が産業革命を起こしました。
でも、インターネットの世界は多様性に富んでいます。それこそ、セキュリティもデータ分析もそれぞれの分野で日々技術革新が起きています。それぞれの専門分野がぶつかり合った場所で「融合」するのがインターネットの世界だと考えています。
ですから、核となる「ある技術」というよりは「融合」なのではないかと思います。そういった意味で楽天技術研究所も「インフラ」、「データ分析」、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」と3つの大きな研究分野を柱に立てています。


1 2