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第14回世界半導体会議(WSC)の結果について

 
(社)電子情報技術産業協会

5月27日、韓国ソウルにて世界半導体会議(WSC: World Semiconductor Council)を開催、日本、欧州、米国、韓国、チャイニーズ台北、中国の6極の半導体企業 19社のトップが参加した。
議長は、主催国の韓国半導体協会を代表して三星電子のOh-Hyun Kwon氏が務め、JEITA半導体部会から、富士通セミコンダクター岡田晴基社長を代表に4名が参加した。
WSCは、関税障壁の撤廃、自由貿易の促進が半導体産業に多大な影響があることを認識しており、ドーハラウンド、ITAの推進について、各国政府及びWTO(世界貿易機関)へ働きかけている。また、自由貿易を阻害する各種規則などの非関税障壁の撤廃についても多大な関心を持っている。加えて、WSCは地球規模の大きな課題である地球温暖化防止(CO2の排出削減、省エネルギーなど)に対して意欲的な活動をしている。
議事に先立つ挨拶で、日本代表の岡田部会長は、「半導体製品は基幹産業における電子機器の中枢部品として、市況の波を受けながらも、常にそれを乗り越えてきた。厳しい現況下、WSCの各極が協力して通商、環境などの課題を早期に解決することは、半導体産業が市況の回復の波に乗ってより一層発展することにつながるものと確信している」とWSCの役割の重要性を強調し、「地球環境を守るために、半導体産業、製品の果たす役割はますます大きくなっており、特に地球温暖化ガスであるPFC(パーフルオロコンパウンド)排出削減などの自主的活動と、省エネルギー社会への半導体製品の貢献を世界にアピールすることを、WSCの各極が協力して継続することが重要である」と述べている。
WSCにおける主要な結果は、下記の通り。
1.知的財産権の保護:
(1)半導体製品の模倣品対策
半導体製品の模倣品が増大し、被害が深刻になっている。模倣品流通の水際対策をより強化するため、6極の税関当局者による会議が昨年の9月に韓国で開催された。この会議で、各国の税関担当者は半導体製品の模倣品が公共の安全や健康を損なう可能性があることを理解し、各国税関がGAMS(半導体に関する政府/当局会合)と協力して模倣品対策に取り組むことに合意したことをWSCは歓迎している。
(2)特許の品質向上
WSCは知的財産権の適切な保護が一層の技術革新を促し、半導体産業の発展に大きく寄与することを認識している。このため、特許の質が高められ、特許権者の権利が正当に守られることが重要であり、WSCは6極の特許庁の特許審査に関わるデータを集め、各国において特許の品質を高めるための提案を了承した。
2.環境対策:
(1)PFC排出削減自主行動
WSCでは2010年までに中国を除く5極が基準年に対し、PFCの10%以上の排出削減を自主的目標として活動を進め、2009年にこのWSC目標を前倒しで達成したことを確認した。WSCは本件について1998年から他産業に先駆けていち早く取り組み、過去10年の半導体産業の大きな成長、生産量の拡大にも関わらずPFCの削減が達成できたことはWSCの大きな成果である。
(2)地球環境負荷の軽減
WSCは、期待する目標値を設定して電気、水、廃棄物の削減に取り組んでいる。2001年を基準年として2010年までに電気(30%)、水(45%)、廃棄物(40%)を削減する目標に対し、2008年のデータはこれを上回って電気(41%)、水(46%)、廃棄物(45%)の削減を達成したことを確認した。
(3)PFOS使用を削減する取組み
半導体製造において、フォトレジストプロセスにおいて、PFOS(パーフルオロスルホン酸塩)の使用が重要な役割を果たしているが、WSCはSEMIと協力してPFOSを代替する材料、技術の開発とPFOS使用の削減を掲げて積極的に進めている中で、PFOSの使用を厳しく制限する昨年のストックホルム条約締約国会議(COP4)の決定を歓迎している。
(4)ポスト2010年に向けた活動
2010年以降もPFC排出削減、電気を含む全エネルギー、水、廃棄物の削減活動を継続することを確認した。
3.新しい半導体製品(MCP、MCO)関税撤廃:
半導体の技術進歩は、新しい機能を集積した新製品を次々と生み出しており、これらの製品のうち複数のICの組み合わせはMCP(マルチチップIC)として2006年から無関税品目として扱われている。WSCは、より進歩した技術により実現されている「ICと一般電子部品や半導体素子を組み合わせたマルチ・コンポーネントIC(MCO)」についても、一般的な半導体製品、MCP製品と同様に無関税となるように各国政府、WCO(世界税関機構)へ継続して要請、必要な支援をすることを確認した。
4.社会的貢献活動:
WSCは半導体製品、半導体産業が地球温暖化防止に果たす役割が大きいことを、2008年に「国際グリーンITシンポジウム」に発表した。その後、日本の半導体産業研究所による半導体社会貢献の研究など全極で半導体産業の社会的貢献をアピールする活動が活発に行われていることをWSCは確認、歓迎している。WSCは、今後も社会へのアピールを積極的に行なうことを確認し、全極が共同してアピール資料を作成していくことを決定した。
5.その他
以上に加えてWSCは、半導体製品の環境適合性規則、暗号化製品に関わる規則、輸出入における制限的な規則、国際統一原産地規則など、世界的な貿易を前提としている半導体産業の成長を阻害する可能性のある種々の規則の動向に大きな興味を持っている。
WSCでは、今回の結果として共同声明(英文)を採択した。追って、日本語版含めて当協会のWebサイト(http://www.jeita.or.jp)に掲載する。
次回は、2011年5月に日本にて開催する。
以 上

(参考)
■日本側の半導体企業出席メンバー:
富士通セミコンダクター株式会社 代表取締役社長   岡田 晴基
ルネサス エレクトロニクス株式会社 代表取締役会長 山口 純史
株式会社 東芝 セミコンダクター社 首席技監     佐藤 哮一郎
パナソニック株式会社 セミコンダクター社 所長   内田 博文
■WSC:1996年8月の日米半導体協定の終結を受けて、既にグローバル化していた半導体のビジネスを反映して、多極の場で世界の半導体業界の共通問題について協議することが必要との認識に基づき、日米業界でWSCの設立に合意、1997年4月に日米欧韓の半導体業界が参加してWSCの最初のミーティングをハワイで開催、今回で14回目となる。
WSCのWebサイト: http://www.semiconductorcouncil.org/